「あははははは」

電話口のヒロの笑い声は止まる事はなかった。

「あー、ウケた。死ぬほどウケた。ヤス、面白いなー」

笑いすぎてむせてゲホゲホいってる。

「もう、笑うのいいんじゃない?」

あたしは冷めた声で言った。

「あー、悪い。あまりにも傑作だったから。返事、確かにくれたよな!確かに・・・・」

また笑い始めた。


そう、あれからしばらくしてあたしは恥ずかしくて学校でもロクにヤスくんと目を合わさないように過ごしていた。

本当に1ヶ月くらい、返事をずーっと待ってたけど、学校でのヤスくんは何事もなかったかのように「おはよう」と声を掛けてくれたし、忘れてる?と疑問に思うほどだった。

ある日、お母さんが「うらら、手紙きてるよ。差出人はないけど」と一通の手紙をあたしに差し出した。

差出人の名前がない、グリーンのシンプルな封筒。

開けてみると、それはヤスくんからの手紙だった。

(とうとう返事きた!?)

あたしはドキドキしながら部屋のドアをしっかり閉めて、なぜか正座で手紙を読んだ。


「手紙に対しての返事って、『うらら、手紙ありがとう。また手紙書いてくれよな!』って・・・・。本当に手紙の返事じゃん。あー、腹痛いわ」

ヒロが笑うように、手紙の内容は見事なまでの「手紙の返事」だった。

多少、『いきなりの内容でビックリしたけど、うららはいつも元気でいいヤツだと思ってたよ』とか、書いてあったけど、あたしが文章につけた「?」に丁寧に答えてくれていた手紙で、逆に『うららはどうですか?』とかあっちからも質問が何個かあった。


「あたし振られたのかなー」

あたしは電話口でヒロに言った。

「いや、まだわかんねーよ。ヤスもうららの事があんまりわかんないからそんな感じの手紙なんじゃねぇの?」

「じゃあ、あたしはコレに返事を書くでしょ?そしたらまた手紙がきて・・・それって、文通?」

あたしの疑問にヒロはまた笑い出した。
どうも、ヤスくんのこの不可解な行動がツボだったらしい。



この後、あたしはヤスくんに手紙を書いて、また返事が来て、を繰り返して、同じクラスの人と文通する事になった。