「オレさ、ヒロとバンド組んでる時に言われたんだ。「モリなら絶対プロになれる」って。だからオレはプロになんなきゃいけないわけ」


モリは寂しそうな笑顔のままだ。


「何回もメンバーも変わってるし、そもそもオレってボーカルやった事なかったんだよ。でも、当時組んでた時のボーカルが辞めて、歌うヤツいないから歌い始めたんだけど、まだまだだなーって毎日思う」


「うん」


「でも、ヒロと約束したからどんな事してもプロにならなきゃダメなんだよな」


「そっか」

あたしはうなずいた。


「お前は?」

モリに聞かれて「え?」と言った。


「何の約束してんの?ヒロと」


「約束はしてないけど・・・」


頭の中に浮かんだのは…

『うららは人の痛みがわかるからアホな事に便乗しない』と言った言葉。

でも、あたしは水商売をして優しい子を傷つけて、子供を汚いと堕ろした。

『あんた何してんの?』キャバ嬢時代、鏡に向かって自分に言った事を思い出した。



「人の痛みがわかるヤツだからアホな事はしないって信じてるって言われた。あたしはそれを一生守りたい。途中、守れなかったから」


モリはあたしの頭を優しく撫でた。


「なぁ、お前が帰ってきたら墓参り行かない?多分、オレもお前も来てない事、すっげー怒ってると思う」


「そうだね。近いうち帰る。ヒロ、絶対怒ってるよね?」


あたし達は笑った。