「そーなの。歌いたいって。アイツ、歌ったの」

ユッコちゃんは笑いをかみ殺している。



アイツとはバンドのギター。
自分勝手でワガママな彼をメンバーもあたしも結構持て余している。



「えー・・・、一応聞くけどさ。いや、結果はわかってるけど・・・どうだった?」

あたしも自分が笑うのを堪えるのに必死だ。



ユッコちゃんは、ちょっとイタズラっぽい顔をして言った。

「白目剥いて歌ってた」


途端に外にまで聞こえるくらい、あたし達は爆笑した。


しばらく笑いすぎて、ヒーヒー言いながら苦しんでいた。

「はぁ・・・、ウケる!死ぬ!!見たかったー」

あたしはたまたまスタジオに行けなかった自分に悔しがった。



「大丈夫、うららちゃんが来た時も歌うって。結構、気に入ってたし」

ユッコちゃんもお腹を抱えながら言った。

「うわー、聴きたい!てか、白目見たらあたし吹き出すかも!!」




2人で想像して、また爆笑した。



そして待ちに待った?スタジオの日。

あたしはワクワクしていた。


「おー、マネージャー。来たんだ」

「うん」

(ダメ!まだ笑っちゃダメ)

肩が震えそうになるのを我慢した。