う・・・・!!

翌日、モリ家に入ってあたしはまずタバコの煙のすごさに目が痛くなった。

「まー、入れよ。」

若葉は玄関に散乱している靴の山を適当に蹴っ飛ばして自分も靴を脱いだ。
あたしは何だかそれすら腹が立って、散乱している靴を全部キレイに揃えてやった。

(人の家にお邪魔する時は靴くらい並べるでしょ!!)

自分の靴もこれぞとばかりに丁寧に揃えると、煙で痛かった目が少し楽になった気がした。

「連れてきたぞー。コイツがうちのクラスのうらら。」

部屋に入ると、煙はますますモクモクとしていて、「お邪魔します」と言うと同時にむせてしまった。

「こんちわー」

知らない制服、多分、隣の中学の制服を着たヤンキーの数人に挨拶された。

「こんにちは・・・」

むせながらあたしも小さい声で挨拶をした。

家の主のモリはというと・・・。

中学生にしては広い部屋の入り口からずーっと奥にある窓際のベッドの上に座っていた。ギターを抱えて。

「おい、モリ!うらら来たぞ」

もう一度若葉が声を掛ける。

モリはあたしを一瞥して、また手元のギターに目線を戻した。

(怖すぎる・・・・)

あたしは入り口に棒立ちでカバンを抱えて突っ立ていた。

「うらら?変な名前だな。ジュース飲む?」

そばにいた知らないヤンキーが缶ジュースを手渡してくれた。

「あ・・・、すいません。ありがとう」

受け取ってからもあたしは座る事が出来なかった。

「コイツらみんな、オレとモリと小学校一緒だったんだよ」

若葉はドッカリと座ってタバコに火をつけた。

「アンタも吸う?」

また同じヤンキーがタバコを差し出してきた。

あたしはブンブン首を振って「いらない!大丈夫!」と言った。


(ヒロー、30分もいられないよぉ)

あたしは
「モリの家、過ごしやすいから大丈夫だ」
とのんきに言ったヒロを心底恨んだ。

その日以来、モリはあたしの中で「超怖いヤンキー」とインプットされた。