手術が終わって、病院から出てくると目の前によく知っている車があった。

「サト?」

あたしは車のそばに寄って中を覗いた。
あれ?誰もいない・・・

しばらく車の前で待っていると、

「フライングしちゃった」

後ろからサトの声が聞こえた。

「病院行ったら、もう帰りました、だって。待っててくれたの?」

あたしは何も言えなくてただ突っ立ていた。

「疲れただろ?乗れば?」

サトは笑顔で言った。



車はちょっとした夜景が見える所に止まった。

「ここ穴場」

サトはニコっとした。

「学校の屋上と一緒?」

「さすがに1人じゃここにはこないけどね。デートの穴場」

車の中で2人で夜景を見ていた。

「うーちんの故郷って夜景キレイだよね」

「まぁ、それだけが売りな部分があるからね」


夜景なんて見た事あったかな?
住んでると意外に行かないもんだし・・・。


「身体辛くない?」

「大丈夫」

あたしはサトに言った。


「サト・・・あのね、あたし最低なんだ」

「え?」

「あたし、最低な人間なの」

「何で?」

あたしは手に持っていたお茶のペットボトルをギュっと握った。


あたしは遠くに見える夜景を見た。
それはキラキラしていて、今のあたしには何だか不釣合いだと思う。


今日、あたしは人を殺した。
それなのに夜景なんて見てていいんだろうか?