覚悟をしてあたしはユカリのそばに行った。

「ねぇ」あたしが声をかけると、ユカリは嬉しそうに「うらら・・・あ、メイ」と言った。

「メイさん。敬語でお願いします。あんたさ、次、あたしのヘルプについてよ」

あたしの顔は多分相当歪んでると思う。


「え?いいの?」

ユカリの笑顔にあたしの心は罪悪感でいっぱいになった。
胸が痛くなる。

「うん。何か、あたしのヘルプがいいって聞いたから」

「ありがとう!!」

(やめてよ。そんな笑顔向けないでよ)

「だから敬語使って。今は別にいいけど、お客の前では絶対だよ」

あたしはユカリの顔をまともに見れないでいた。



「メイさん、お願いします」

今日だけはあたしの客は来ないでほしかった。
あたしを呼ばないでほしかったのに・・・。

「はい」

あたしはため息をついて席を立った。

ユカリのそばに行くとユカリは一生懸命マスカラを塗っていた。
多分、あたしに恥をかかせないためにこの子なりに努力してくれてる。

また罪悪感でいっぱいになる。

「呼ばれた。ついてきて」

あたしはやっぱりユカリの顔を見れなかった。


客は2、3回来た事があるようなホストっぽい若い男2人だった。

(お金のためなんだから!営業、営業!)

言い聞かせて、あたしはいつも通り満面の笑顔になる。

「こんばんは」

あたしが席に着くと、ユカリも後に続く。

「この子は?」

ちょっと半笑いで客はユカリを見た。

「ユカリちゃん。新しい子なの。まだ慣れてないからよろしくお願いします」

あたしが頭を下げるとユカリも「こんばんは」と頭を下げた。

「ユカリちゃん、水割り2つ作って」

ユカリはヘラヘラ笑いながら水割りを作り始めた。

(あーあ・・・)

ユカリはウイスキーはこぼすし、飲み物の量もバラバラに作った。

舌打ちしたくなったが、我慢してあたしも手伝う。


しばらく、客はユカリに興味があるみたいで、色々質問していた。
当の本人はおかしくもない所で笑っってみたり、本当に空気の読めない感じ。
客も段々ユカリに飽きてしまって、バカにしたように笑っていた。