あたしはしばらく考えていた。

「マリナさん」

声を掛けると「どうしたの?」と返事が来る。


「やっぱり・・・、あたしには出来ない。教育係でもないし、そんな事出来る立場じゃないです」


「あらぁ?メイだって結構一人前になったと思うけど?大丈夫よ。オーナーにはあたしから言っておくし、そんな心配しなくていいって」

笑顔で言われても、あたしは複雑な顔のまま。

「それともぉ」

マリナさんは立ち上がってあたしの首に手を絡ませる。

「出来ない?あたしのお願いなんだけどなー。メイ、出来ない?」


ダメだ。
この人はこの店のトップだ、何を言っても無駄だ。


「・・・大丈夫です。何とかしますから」

あたしはやり切れない気持ちで言った。


マリナさんはあたしの答えにニッコリと微笑む。

「メイはあたしの大事な子だからね、いい子だもんね」


やっぱりこの人は怖い・・・。


あたしがマリナさんのそばを離れると、ユカリの教育係の子が寄ってきた。

「メイ、あんた大丈夫なの?あたしだって出来ないよ」

「うん・・・、しょうがないもん。いずれはこうなるって知ってたし、あたしが言うしかないんだから諦める」

「無理するんじゃないよ?イヤがったら諦めなよ?あたしも一緒にマリナさんに謝るからさ」


あたしは一息ついて、その子に笑顔を向けた。

「あたしが欲しいのはお金だから。友情とかそんなのじゃないから、だから平気だよ。あたしが・・・ユカリの未来を決める」