「原チャ今壊れててよ、チャリで悪いな」

若葉はそう言って、あたしに自転車の後ろに立てと指差した。

「原チャなんてヤダからチャリで十分です」

あたしは若葉の肩に手を置いて、自転車の後ろのステップに立った。

自転車が勢いよく走り出す。

「うららさ、ヒロと仲良かったっけ?」

自転車をこいでる若葉が言った。

「あー・・・、そういえばちゃんと話すのって今日が初めてかも」

「へー、あ!今度さ、お前をモリの家に連れてってやるよ」

「モリ?誰それ?」

「前によ、サクヤくんがギター教えたってヤツ。知ってるだろ?」

「あの人ってモリだっけ?違う名前じゃない?」

あたしは無口で凝視してきたヤンキーを思い浮かべた。

「モリってのはあだ名。あいつ、カッコよくない?」

「うーん・・・、どうだろう。それに彼女いるじゃん、あたしと小学校一緒の子」

その「モリ」くんはユキと仲がいい子と付き合ってはずだ。

「いいヤツだぞ、彼女とか関係ねーし。オレがうららを連れて行くんだからさ」

「ふーん。でも、怖いからなー、いいよ。やめておく」

あたしは絶対モリって人が苦手だろうなと確信してるから断った。

「来週、学校帰りに連れてくから。よろしくな」

若葉は全くあたしの話を聞かないで決めてしまった。


あたしはヤンキーのたまり場、モリ家へ行く事が決定したようだ。

(殺されませんように!そして犯されませんように!)

強く願った。