「本屋でバイトしてます。飲食店は俺には荷が重いし、テスト期間の調整が難しくて、うちの高校は採用してもらいづらいって聞いたんですよ」
「君んとこかなりの進学校だもんねぇ」
結局、ソフトを買ってからも何度か店へ通い、バイト代が入ったところで講座を一回申し込んだ。
持ってきたノートパソコンを開き、聞きたいことを書いたメモを見ながら、分からなかった操作を順番に教えてもらう。家で試して駄目だったところを、自分のデータで確かめながら直せるのは、検索して延々と動画を見るより早かった。
最後に、投稿するときのことも聞いてみる。
「俺、見る専読む専で、いいねくらいしかしたことないんですけど」
「慣れるまでは、『アップしました』とか、『イラスト見て見て』とか、その程度でいいんじゃないかな。あと、宣伝用とプライベート用のアカウントは分けておいた方がいいよ。匂わせもしない」
「なるほど」
「あと、電話帳と連携する設定とかは気をつけて。そこから知り合いに出て、正体がばれることもあるから」
「こわ」
俺は早速、スマホで設定を確認した。自分から言わなければ分からないと思っていたが、そうとも限らないらしい。
「名前はどうするの?」
「そこもまだ決めてなくて」
「『なお』でも『おと』でも、中性的でいいと思うよ?」
「音……」
昔、紙に書かれた自分の名前のうち、「おと」に丸をつけてくれた優太を思い出す。
「でもちょっと、まんますぎるというか……もう少し考えてみます」
「うん。聞かせてもいいよって思ったときに、アカウント教えてくれたら嬉しいな」
「はい、ぜひ」
家に帰って、新しく作ったアカウントの名前の欄を開く。
流石に「おと」を名前につける自信も自意識もない……と思ったが、ひとりだけ仲間外れだと思っていた俺の名前に「音」が入っているのは、やっぱり少し嬉しくて、なんだか四つ葉のクローバーを見つけたような気分だった。
それと、優太の投稿名は「uta」だ。せっかくだし、勢いで「oto」にしようかな。何かいいことがありそうな気がする。
半角でotoと打ち込み、そのままプロフィールも書こうとしたけど、何をどこまで書いていいのか分からず、ひとまず「曲を作っています」とだけ入れた。
動画の作成は、さすがに凝ったものは無理だ。けれど、綺麗な一枚絵に歌詞を浮かべていく形なら、自力で何とかなりそうだ。
絵師には詳しくないので、色々な動画やSNSを見て、好きな絵を描く人を探す。依頼を受け付けているか、いくらかかるか、動画に使ってもいいのか。一つずつ確かめ、貯金とバイト代で頼めそうな人にメッセージを書いた。
曲を添付して、何度も読み返してから送信する。返事が来るまで落ち着かなくて、結局その日は何回もスマホを見てしまった。
「君んとこかなりの進学校だもんねぇ」
結局、ソフトを買ってからも何度か店へ通い、バイト代が入ったところで講座を一回申し込んだ。
持ってきたノートパソコンを開き、聞きたいことを書いたメモを見ながら、分からなかった操作を順番に教えてもらう。家で試して駄目だったところを、自分のデータで確かめながら直せるのは、検索して延々と動画を見るより早かった。
最後に、投稿するときのことも聞いてみる。
「俺、見る専読む専で、いいねくらいしかしたことないんですけど」
「慣れるまでは、『アップしました』とか、『イラスト見て見て』とか、その程度でいいんじゃないかな。あと、宣伝用とプライベート用のアカウントは分けておいた方がいいよ。匂わせもしない」
「なるほど」
「あと、電話帳と連携する設定とかは気をつけて。そこから知り合いに出て、正体がばれることもあるから」
「こわ」
俺は早速、スマホで設定を確認した。自分から言わなければ分からないと思っていたが、そうとも限らないらしい。
「名前はどうするの?」
「そこもまだ決めてなくて」
「『なお』でも『おと』でも、中性的でいいと思うよ?」
「音……」
昔、紙に書かれた自分の名前のうち、「おと」に丸をつけてくれた優太を思い出す。
「でもちょっと、まんますぎるというか……もう少し考えてみます」
「うん。聞かせてもいいよって思ったときに、アカウント教えてくれたら嬉しいな」
「はい、ぜひ」
家に帰って、新しく作ったアカウントの名前の欄を開く。
流石に「おと」を名前につける自信も自意識もない……と思ったが、ひとりだけ仲間外れだと思っていた俺の名前に「音」が入っているのは、やっぱり少し嬉しくて、なんだか四つ葉のクローバーを見つけたような気分だった。
それと、優太の投稿名は「uta」だ。せっかくだし、勢いで「oto」にしようかな。何かいいことがありそうな気がする。
半角でotoと打ち込み、そのままプロフィールも書こうとしたけど、何をどこまで書いていいのか分からず、ひとまず「曲を作っています」とだけ入れた。
動画の作成は、さすがに凝ったものは無理だ。けれど、綺麗な一枚絵に歌詞を浮かべていく形なら、自力で何とかなりそうだ。
絵師には詳しくないので、色々な動画やSNSを見て、好きな絵を描く人を探す。依頼を受け付けているか、いくらかかるか、動画に使ってもいいのか。一つずつ確かめ、貯金とバイト代で頼めそうな人にメッセージを書いた。
曲を添付して、何度も読み返してから送信する。返事が来るまで落ち着かなくて、結局その日は何回もスマホを見てしまった。


