ほんわかさん


「ほんわか堂」の店先には、小さな黒板が立てかけてあります。
そこには、ほとりの手書きで、こんなふうに書かれているのです。

きょうは なんて かきましょう
う~ん
ことばが かくれんぼしています

「ほんわか堂」
ほんじつ こっそり おいとまをいただきます。

~ほとりの休日~

***

朝。
私は、少しおねぼうしてしまいました。
今日はおいとまをいただいています。
ほんとうなら、早起きしてでかけようと思ったのですが、結局ゆっくりの朝になってしまいました。
そんなわたしにお茶を淹れました。

“目覚め“のお茶です。
私はひと口飲みました。

「はぁ。飲んであたまがスッキリしました」

遅めの朝食をとったあと、近所の公園に出かけてみました。
家族連れや、カップルが楽しそうに過ごしています。
そんな光景を見るのが、私は好きです。

ポーン

ボールが転がってきました。小さな女の子が取りに走ってきます。
女の子はつまずいて転んでしまいました。

「大丈夫?えらいね?泣かなかったね」

ほとりは優しく声をかけました。

「はい。ボール」
「ありがとう。かわいいお姉さん」

女の子はボールを持って駆けていきました。
遠くでご両親が会釈をしていました。

「かわいいお姉さんだなんて。ふふ」

***

その後、お買い物にでかけました。
いつも立ち寄る八百屋さんで、白菜と水菜を買うだけのつもりが、すすめられるまま買ってしまい、おまけもつけてくれて、両手いっぱいにお野菜をかかえながら、帰宅しました。

「あは、いつも予定より多く買ってしまうんだよなぁ。でも大将が笑顔だったから良いか」

(余らせないよう、沢山食べなきゃ)

***

午後は、読書をしました。
お茶を飲みながらの至福の時間です。

気づいたらうたた寝していました。

「あれ?どこまで読んだっけ?」

ほとりはいつも通り、読んではうたた寝を繰り返します。

***

夜。
今日は野菜鍋を作りました。
まるで、相撲部屋のちゃんこみたいになってしまいました。

「いつも作りすぎてしまうなぁ」

もちろん食べきれません。

「作りすぎたカレーみたいになっちゃった。3日間はこのお鍋ね。味を変えて楽しみますか」

***

ほとりはふと、ポケットの中に小さな紙切れが入っているのに気づきました。

「あれ?なんでしょう?」

そこには、見覚えのない文字で、こんな言葉が書かれていました。

『きょうは、あなたが整う番です』

「あら……」

ほとりは、すこしだけ目を閉じました。

「じゅうぶん、整いましたよ」

***

さて、夜も更けてきました。そろそろ寝る時間です。

「明日は、どんな人がくるかな?」

ほとりは、目をつむりながら、こう唱えて眠りにつきました。

「あしたも 少しだけ だれかのこころが やわらかくなりますように」

【おくり物】
小さな紙きれ
メッセージ:
『きょうは、あなたが整う番です』

**次にのれんをくぐるのは、もしかすると“あなた”かもしれませんね**