蝉の鳴き声が隙間なく響く七月下旬。
焼けつくような日差しに、体のエネルギー全てを吸い取られ干からびてしまいそうな、そんなある日。
自販機にジュースを買いに行く道のりで、俺は隼人先輩を見つけた。
「隼人先輩!」
嬉しくて駆け寄ると、隼人先輩は俺を見て、また来たのかと顔をゆがめた。
もちろん、直接そう言われたわけではない。けれど目が口ほどにものを言っている。
思っていることが全部顔に出てしまうところも、隼人先輩の魅力の一つだ。
「先輩、今日も今日とて大好きです。付き合ってください!」
「今日も今日とてごくろうさん。そんでもってゴメンナサイ」
隼人先輩は特に悪びれる様子もなく、俺の告白をあっさり受け流す。
通算百四十二回目の告白も見事に惨敗だ。
それでも俺はへこたれない。
「ありがとうございます。明日も告白します!」
隼人先輩に告白し始めて四ヶ月。今じゃ告白もすっかりおなじみの光景だ。
最初は先輩に迷惑をかけまいと、人目をはばかるようにこそこそと告白していた俺だったが、当の先輩は周囲の目なんてまるで気にしていないようだった。
その証拠に、毎度校舎裏に呼んで告白しようとする俺に、「わざわざそんなところに行かなくてもここでいいだろ」と、人通りの多い廊下で告白をさせたほどだ。
そのおかげもあってか、俺が先輩を好きだということは、いまや周知の事実だ。
ただ、どうやら周りは、本気で俺が先輩に恋をしているとは思っていないらしい。
あくまで俺の「好き」は憧れからくる、一種の冗談だと認識されているようだ。
「チワワちゃん、今日のタスクは完了?」
いつものように生徒手帳に正の字を書いていると、隼人先輩の隣で糸目先輩もとい、花村先輩がにこりと微笑んでいた。
「毎度のごとく、チワワ君も大変だな」
その横で、短髪の金田先輩が感心するように頷いている。
俺のことをチワワと呼ぶこの二人だけが、俺の記念すべき第一回目の告白を目の当たりにしており、かつ、俺の告白が本気だということを知っている。
「はい! 今日で百四十二回目でした」
持っていた生徒手帳をドヤ顔で見せつけると、隼人先輩はわずかに目を見開いた。
「……俺、そんなに告白されてるわけ?」
「愛されてるね~」「愛されてるな」
ニヤニヤと笑みを投げかける花村先輩と金田先輩を、隼人先輩がじろりと睨む。
「それにしてもチワワちゃんもすごいね。隼人に振られてもめげずに挑戦してきたの、君ぐらいだよ」
「すごいだなんて。俺は先輩に想いを伝えたいだけですから」
「一体、隼人のどこがそんなにいいんだか。やっぱり顔?」
花村先輩に訊ねられて、俺は即答した。
「優しいところです!」
隼人先輩にはいいところがたくさんあるけれど、やっぱり一番はその内面だ。
一見塩対応に見えるけど、本当は先輩がとても優しいことを俺は知っている。
そこに惚れたのだ。
自信満々に答えた俺に、三人が目を丸くした。
あれ? 何かまずいことでも言っただろうか。
「優しい……って、誰のこと?」
「隼人先輩です」
再び花村先輩に訊ねられ、俺は他に誰がいるんだと自信満々に告げた。
花村先輩と金田先輩はしばし顔を見合わせ、次の瞬間、あろうことか腹を抱えて笑い始めた。
「ぷっ……、ははははは!」
そんな二人を、隼人先輩は苦虫を嚙み潰したような顔で見ている。
「塩対応でおなじみの隼人に優しいって」
「クラスの女子が聞いたら卒倒するな」
一通り笑ったあと、花村先輩が目じりに滲んだ涙を指先で拭いながら俺を見た。
「あー笑った。チワワちゃんがあんまりにも面白いこと言うから」
「え? 面白いこと?」
俺は首を傾げる。
だって別に面白いことを言ったつもりなんてない。
「隼人に告白をする子たちはね、ほとんどが隼人の顔目当てなんだよ」
「顔ですか……」
俺は視線を隼人先輩に向けた。
すっと通った鼻梁に、形の良い唇。釣り目がちの瞳は切れ長で、一度目が合ったら吸い込まれそうなほどに力強い。
おまけに背は高く、スタイルも良いのだから、女子たちは黙ってないだろう。
でも——。
「隼人先輩って、そんなにイケメンなんですか?」
「え?」
隼人先輩を含む三人の視線が、一挙に俺に注がれる。
「いや、隼人先輩がイケメンなのはわかりますよ? でも、先輩の性格の良さを超えるほど顔が良いかと言われると……。もちろんかっこいいけど、先輩の一番の魅力はその優しい性格だと思うから」
たとえるなら、好きだった小説の表紙がおしゃれだっただけ。
大切なのは中身なわけで、表紙の出来はそれ自体の評価にはつながらない。『お、表紙おしゃれじゃん』程度だ。
表紙を眺めたくて、小説を買っているわけではない。
「俺は、先輩の性格に惚れたんです」
そうはっきりと告げると、隼人先輩はなぜか眉間にしわを寄せ、下唇を突き出した。
明らかに不機嫌そうなその表情に、もしかしたら何か地雷を踏んでしまったかもしれないと狼狽える。
そんな俺に、花村先輩がくすりと笑った。
「大丈夫。これ、照れてるだけだから」
「照れてる?」
「おい花村。うるせぇ」
隼人先輩が花村先輩を睨むも、花村先輩はそんなことお構いなしだ。
「隼人はさ、照れると不機嫌そうに下唇をつきだす癖があるの。多分、顔より中身なんて初めて言われたから照れてんだよ」
「おい花村、それ以上喋ったら殴るぞ」
もちろん隼人先輩が殴ったりなんかしないことはみんなわかってる。
それよりも、照れてるってなんだそれ。なんかすごく可愛い。
思わず隼人先輩に目を向けると、隼人先輩はなんだよと俺にも鋭い視線を向ける。
こんなに怖い顔なのに、実は照れてるだけなのか。知ってしまえば可愛くて仕方がない。
「そういえばあと一週間で夏休みだけど、チワワちゃん。夏休みのご予定は?」
「夏休みは——」
花村先輩の問いに、そこまで答えたところで、夏休みの予定を思いだし、途端に肩が重くなる。項垂れながら、ため息をついた。
「補習があります……」
「補習って、赤点があったってこと?」
「チワワちゃん、何教科赤点だったの?」
金田先輩と花村先輩に前のめりで訊ねられ、俺は小さな声で答えた。
「……です」
「は?」
「……全教科です」
隼人先輩の視線が痛い。絶対今、こいつそんな馬鹿なのかって思っている。
そんな俺の予想は的中。
「お前、そんな馬鹿だったのか」
隼人先輩は驚きを通り越して、呆れたように頭を抱える。
あまりにストレートすぎる言葉に、返す言葉も見つからない。
「それは……なかなかだね」
「俺、初めて見たかも」
先輩たちの哀れんだ視線が、ぐさぐさと刺さる。
「身の丈に合わない学校に来てしまったせいで、ついていくのにやっとで……」
声が自然と小さくなっていく。
そもそも俺は頭が良くない。そして自慢じゃないが要領も良くない。
それなのに、隼人先輩と同じ高校に入るためだけにこの学校へ来たのだ。
レベルの高い日々の授業について行けるわけもなく、蓋を開ければ全教科赤点という惨憺たる結果。
情けなさすぎる。
すっかり肩を落とし切った俺の耳に、チッと隼人先輩の舌打ちが届く。
もしかしたら呆れられたかも。
そんな不安が頭をかすめたとき。
「仕方ねぇな。スマホ出せ」
隼人先輩はなぜか俺に向かって手を出していた。
「……へ?」
「連絡先登録するから、スマホ出せって言ってんの」
ぽかんとする俺に隼人先輩は「早く」と催促する。
急いでスマホを取り出すと、隼人先輩は軽快なタップで、俺のスマホに自身の連絡先を登録した。
なんで? どういうこと?
隼人先輩の切れ長の瞳に、戸惑う自分の姿が映る。けれど、先輩はそんなことお構いなしだ。
「で、追試はいつ?」
「夏休み始まって一週間後です」
「分かった。じゃあそれまで俺が毎日勉強教えてやるから」
「え!」
思わず声が裏返った。
隼人先輩が俺に勉強を教えてくれる?
いや、それ以上に、夏休みも先輩に会えるだと? しかも合法で。
「嫌なわけ?」
固まった俺に隼人先輩はわずかに眉を寄せた。俺は頭をぶんぶんと横に振る。それはもう、首がもげてしまいそうなほど思い切り。
「補習は毎日何時まで?」
「一時までです!」
「じゃぁその後、図書室集合な。俺は受験勉強で基本ずっと図書館にいるから。そんでもし行けない日があれば連絡して」
あまりの驚きに目を瞬かせる俺に、隼人先輩は「わかったか?」と顔を覗きこんでくる。
「ほんとにほんとで、先輩が勉強おしえてくれるんですか……?」
「だからそう言ってんだろ。まあ、お前がこの学校に入った原因は俺らしいし」
わずかに下唇を突き出す隼人先輩に、俺は天を仰いだ。
ああ神様。補習なんて最悪だと嘆いていたけど、ありがとう補習! ありがとう赤点!
「よかったね。こう見えて隼人、頭はいいんだよ」
「俺らの中じゃダントツだな」
花村先輩と金田先輩がそういうのならきっとそうなのだろう。
頭も良くて、性格もよくて、顔も良くて。どれだけパーフェクトなんだ。
俺の好きな人は本当に無敵なのかもしれない。
俺は生まれて初めて、頭の悪さを神様に感謝したのだった。
焼けつくような日差しに、体のエネルギー全てを吸い取られ干からびてしまいそうな、そんなある日。
自販機にジュースを買いに行く道のりで、俺は隼人先輩を見つけた。
「隼人先輩!」
嬉しくて駆け寄ると、隼人先輩は俺を見て、また来たのかと顔をゆがめた。
もちろん、直接そう言われたわけではない。けれど目が口ほどにものを言っている。
思っていることが全部顔に出てしまうところも、隼人先輩の魅力の一つだ。
「先輩、今日も今日とて大好きです。付き合ってください!」
「今日も今日とてごくろうさん。そんでもってゴメンナサイ」
隼人先輩は特に悪びれる様子もなく、俺の告白をあっさり受け流す。
通算百四十二回目の告白も見事に惨敗だ。
それでも俺はへこたれない。
「ありがとうございます。明日も告白します!」
隼人先輩に告白し始めて四ヶ月。今じゃ告白もすっかりおなじみの光景だ。
最初は先輩に迷惑をかけまいと、人目をはばかるようにこそこそと告白していた俺だったが、当の先輩は周囲の目なんてまるで気にしていないようだった。
その証拠に、毎度校舎裏に呼んで告白しようとする俺に、「わざわざそんなところに行かなくてもここでいいだろ」と、人通りの多い廊下で告白をさせたほどだ。
そのおかげもあってか、俺が先輩を好きだということは、いまや周知の事実だ。
ただ、どうやら周りは、本気で俺が先輩に恋をしているとは思っていないらしい。
あくまで俺の「好き」は憧れからくる、一種の冗談だと認識されているようだ。
「チワワちゃん、今日のタスクは完了?」
いつものように生徒手帳に正の字を書いていると、隼人先輩の隣で糸目先輩もとい、花村先輩がにこりと微笑んでいた。
「毎度のごとく、チワワ君も大変だな」
その横で、短髪の金田先輩が感心するように頷いている。
俺のことをチワワと呼ぶこの二人だけが、俺の記念すべき第一回目の告白を目の当たりにしており、かつ、俺の告白が本気だということを知っている。
「はい! 今日で百四十二回目でした」
持っていた生徒手帳をドヤ顔で見せつけると、隼人先輩はわずかに目を見開いた。
「……俺、そんなに告白されてるわけ?」
「愛されてるね~」「愛されてるな」
ニヤニヤと笑みを投げかける花村先輩と金田先輩を、隼人先輩がじろりと睨む。
「それにしてもチワワちゃんもすごいね。隼人に振られてもめげずに挑戦してきたの、君ぐらいだよ」
「すごいだなんて。俺は先輩に想いを伝えたいだけですから」
「一体、隼人のどこがそんなにいいんだか。やっぱり顔?」
花村先輩に訊ねられて、俺は即答した。
「優しいところです!」
隼人先輩にはいいところがたくさんあるけれど、やっぱり一番はその内面だ。
一見塩対応に見えるけど、本当は先輩がとても優しいことを俺は知っている。
そこに惚れたのだ。
自信満々に答えた俺に、三人が目を丸くした。
あれ? 何かまずいことでも言っただろうか。
「優しい……って、誰のこと?」
「隼人先輩です」
再び花村先輩に訊ねられ、俺は他に誰がいるんだと自信満々に告げた。
花村先輩と金田先輩はしばし顔を見合わせ、次の瞬間、あろうことか腹を抱えて笑い始めた。
「ぷっ……、ははははは!」
そんな二人を、隼人先輩は苦虫を嚙み潰したような顔で見ている。
「塩対応でおなじみの隼人に優しいって」
「クラスの女子が聞いたら卒倒するな」
一通り笑ったあと、花村先輩が目じりに滲んだ涙を指先で拭いながら俺を見た。
「あー笑った。チワワちゃんがあんまりにも面白いこと言うから」
「え? 面白いこと?」
俺は首を傾げる。
だって別に面白いことを言ったつもりなんてない。
「隼人に告白をする子たちはね、ほとんどが隼人の顔目当てなんだよ」
「顔ですか……」
俺は視線を隼人先輩に向けた。
すっと通った鼻梁に、形の良い唇。釣り目がちの瞳は切れ長で、一度目が合ったら吸い込まれそうなほどに力強い。
おまけに背は高く、スタイルも良いのだから、女子たちは黙ってないだろう。
でも——。
「隼人先輩って、そんなにイケメンなんですか?」
「え?」
隼人先輩を含む三人の視線が、一挙に俺に注がれる。
「いや、隼人先輩がイケメンなのはわかりますよ? でも、先輩の性格の良さを超えるほど顔が良いかと言われると……。もちろんかっこいいけど、先輩の一番の魅力はその優しい性格だと思うから」
たとえるなら、好きだった小説の表紙がおしゃれだっただけ。
大切なのは中身なわけで、表紙の出来はそれ自体の評価にはつながらない。『お、表紙おしゃれじゃん』程度だ。
表紙を眺めたくて、小説を買っているわけではない。
「俺は、先輩の性格に惚れたんです」
そうはっきりと告げると、隼人先輩はなぜか眉間にしわを寄せ、下唇を突き出した。
明らかに不機嫌そうなその表情に、もしかしたら何か地雷を踏んでしまったかもしれないと狼狽える。
そんな俺に、花村先輩がくすりと笑った。
「大丈夫。これ、照れてるだけだから」
「照れてる?」
「おい花村。うるせぇ」
隼人先輩が花村先輩を睨むも、花村先輩はそんなことお構いなしだ。
「隼人はさ、照れると不機嫌そうに下唇をつきだす癖があるの。多分、顔より中身なんて初めて言われたから照れてんだよ」
「おい花村、それ以上喋ったら殴るぞ」
もちろん隼人先輩が殴ったりなんかしないことはみんなわかってる。
それよりも、照れてるってなんだそれ。なんかすごく可愛い。
思わず隼人先輩に目を向けると、隼人先輩はなんだよと俺にも鋭い視線を向ける。
こんなに怖い顔なのに、実は照れてるだけなのか。知ってしまえば可愛くて仕方がない。
「そういえばあと一週間で夏休みだけど、チワワちゃん。夏休みのご予定は?」
「夏休みは——」
花村先輩の問いに、そこまで答えたところで、夏休みの予定を思いだし、途端に肩が重くなる。項垂れながら、ため息をついた。
「補習があります……」
「補習って、赤点があったってこと?」
「チワワちゃん、何教科赤点だったの?」
金田先輩と花村先輩に前のめりで訊ねられ、俺は小さな声で答えた。
「……です」
「は?」
「……全教科です」
隼人先輩の視線が痛い。絶対今、こいつそんな馬鹿なのかって思っている。
そんな俺の予想は的中。
「お前、そんな馬鹿だったのか」
隼人先輩は驚きを通り越して、呆れたように頭を抱える。
あまりにストレートすぎる言葉に、返す言葉も見つからない。
「それは……なかなかだね」
「俺、初めて見たかも」
先輩たちの哀れんだ視線が、ぐさぐさと刺さる。
「身の丈に合わない学校に来てしまったせいで、ついていくのにやっとで……」
声が自然と小さくなっていく。
そもそも俺は頭が良くない。そして自慢じゃないが要領も良くない。
それなのに、隼人先輩と同じ高校に入るためだけにこの学校へ来たのだ。
レベルの高い日々の授業について行けるわけもなく、蓋を開ければ全教科赤点という惨憺たる結果。
情けなさすぎる。
すっかり肩を落とし切った俺の耳に、チッと隼人先輩の舌打ちが届く。
もしかしたら呆れられたかも。
そんな不安が頭をかすめたとき。
「仕方ねぇな。スマホ出せ」
隼人先輩はなぜか俺に向かって手を出していた。
「……へ?」
「連絡先登録するから、スマホ出せって言ってんの」
ぽかんとする俺に隼人先輩は「早く」と催促する。
急いでスマホを取り出すと、隼人先輩は軽快なタップで、俺のスマホに自身の連絡先を登録した。
なんで? どういうこと?
隼人先輩の切れ長の瞳に、戸惑う自分の姿が映る。けれど、先輩はそんなことお構いなしだ。
「で、追試はいつ?」
「夏休み始まって一週間後です」
「分かった。じゃあそれまで俺が毎日勉強教えてやるから」
「え!」
思わず声が裏返った。
隼人先輩が俺に勉強を教えてくれる?
いや、それ以上に、夏休みも先輩に会えるだと? しかも合法で。
「嫌なわけ?」
固まった俺に隼人先輩はわずかに眉を寄せた。俺は頭をぶんぶんと横に振る。それはもう、首がもげてしまいそうなほど思い切り。
「補習は毎日何時まで?」
「一時までです!」
「じゃぁその後、図書室集合な。俺は受験勉強で基本ずっと図書館にいるから。そんでもし行けない日があれば連絡して」
あまりの驚きに目を瞬かせる俺に、隼人先輩は「わかったか?」と顔を覗きこんでくる。
「ほんとにほんとで、先輩が勉強おしえてくれるんですか……?」
「だからそう言ってんだろ。まあ、お前がこの学校に入った原因は俺らしいし」
わずかに下唇を突き出す隼人先輩に、俺は天を仰いだ。
ああ神様。補習なんて最悪だと嘆いていたけど、ありがとう補習! ありがとう赤点!
「よかったね。こう見えて隼人、頭はいいんだよ」
「俺らの中じゃダントツだな」
花村先輩と金田先輩がそういうのならきっとそうなのだろう。
頭も良くて、性格もよくて、顔も良くて。どれだけパーフェクトなんだ。
俺の好きな人は本当に無敵なのかもしれない。
俺は生まれて初めて、頭の悪さを神様に感謝したのだった。


