「おはようございます、隼人先輩! 今日も大好きです。付き合ってください!」
校門の桜並木に緑の若葉が芽吹きだした四月下旬。
俺、千羽 渉は満面の笑みで、目の前にいる柏木 隼人先輩に通算二十八回目の告白をしていた。
「……断る」
少し長めの前髪から、眉をひそめた隼人先輩が明らかに迷惑そうな表情でこちらに視線を向ける。
ただ、そんなことで挫ける俺じゃない。
「お返事ありがとうございます。また明日、告白します!」
にこりと笑みを深めると、隼人先輩は頭を抱えながら、大きくため息を漏らした。
「……今ので何回目?」
「二十八回目ですね」
俺の返答に、隼人先輩はわずかに目を見開いた。
「即答じゃん。それ、どこかにメモったりしてんの?」
「もちろん。生徒手帳にしっかりと」
俺は制服のブレザーの胸ポケットから生徒手帳を取り出すと、『隼人先輩への告白の数』と書いたページを先輩に差し出した。
これまで隼人先輩にした告白は、ここに正の字でカウントしている。
「うっわ……」
先輩は若干引き気味のようだけれど、俺は特に気にしない。
「あ、さっきの分はまだ書いてないので、今から書きます」
先輩の目の前で、書きかけの正の字に一本線を足す。
「お前、ほんとに三百六十五回告白しようと思ってんの?」
「はい、もちろん。あ……迷惑ですか? 迷惑ならこれからは、気持ち控えめに告白します」
いくら先輩が好きだからといって、相手に不快感を与えてしまえば元も子もない。
俺は、ストーカーになりたいわけではない。
ただこの想いを伝えたい、自分の気持ちを知ってもらいたい、それだけ。
もちろん告白するわけだから、あわよくば恋人になりたいという下心もある。けれどそれは二の次、三の次だ。
顔色を窺う俺に、先輩は噴き出すように笑った。
先輩の大きな肩が上下に細かく揺れる。
「控えめに告白って。やめる選択肢はないのか」
「辞めたら俺の生きる意味がなくなっちゃうので」
隼人先輩に告白することは、もはや俺のルーティンになっている。
今更やめろなんて、死ねって言われているようなもんだ。
「ふっ。相変わらずぶっ飛んでんな、お前」
いつもは猫目なその瞳が、笑った時だけふにゃんと柔らかくなるのを俺は知ってる。
その笑顔に、俺の心臓がぎゅんっと締め付けられる。
これだから先輩への告白はやめられない。
「迷惑じゃないけど、俺がお前を好きになることはないよ。それでもいいのなら、まあご勝手に」
再び凛とした猫目に戻った隼人先輩は、淡々と告げる。もちろん視線すら合わせてはくれない。
それでも俺は嬉しくて、わずかに口元を緩めた。
だって『迷惑じゃない』と言ってくれたのだ。そもそも先輩が俺のことを好きになってくれるなんて、期待してない。俺はこの気持ちを伝えることができればそれでいいのだ。
だから、『迷惑じゃない』って言葉一つで気持ちはどこまでも天にのぼりそうになる。そんなこと言われたら、もっと気持ちを伝えたくなる。
わずかに口を開きかけ、いやいやだめだとすぐさま口にぎゅっと力を入れる。
だって最初に決めたから。先輩への告白は三百六十五回まで。今日は一回の予定だ。
そう、俺が先輩に告白できるのはあと三百三十七回。
その最後の一回まで、俺は先輩に「好き」を伝え続ける。
たとえ先輩が俺のことを好きにならないとわかっていても――。
校門の桜並木に緑の若葉が芽吹きだした四月下旬。
俺、千羽 渉は満面の笑みで、目の前にいる柏木 隼人先輩に通算二十八回目の告白をしていた。
「……断る」
少し長めの前髪から、眉をひそめた隼人先輩が明らかに迷惑そうな表情でこちらに視線を向ける。
ただ、そんなことで挫ける俺じゃない。
「お返事ありがとうございます。また明日、告白します!」
にこりと笑みを深めると、隼人先輩は頭を抱えながら、大きくため息を漏らした。
「……今ので何回目?」
「二十八回目ですね」
俺の返答に、隼人先輩はわずかに目を見開いた。
「即答じゃん。それ、どこかにメモったりしてんの?」
「もちろん。生徒手帳にしっかりと」
俺は制服のブレザーの胸ポケットから生徒手帳を取り出すと、『隼人先輩への告白の数』と書いたページを先輩に差し出した。
これまで隼人先輩にした告白は、ここに正の字でカウントしている。
「うっわ……」
先輩は若干引き気味のようだけれど、俺は特に気にしない。
「あ、さっきの分はまだ書いてないので、今から書きます」
先輩の目の前で、書きかけの正の字に一本線を足す。
「お前、ほんとに三百六十五回告白しようと思ってんの?」
「はい、もちろん。あ……迷惑ですか? 迷惑ならこれからは、気持ち控えめに告白します」
いくら先輩が好きだからといって、相手に不快感を与えてしまえば元も子もない。
俺は、ストーカーになりたいわけではない。
ただこの想いを伝えたい、自分の気持ちを知ってもらいたい、それだけ。
もちろん告白するわけだから、あわよくば恋人になりたいという下心もある。けれどそれは二の次、三の次だ。
顔色を窺う俺に、先輩は噴き出すように笑った。
先輩の大きな肩が上下に細かく揺れる。
「控えめに告白って。やめる選択肢はないのか」
「辞めたら俺の生きる意味がなくなっちゃうので」
隼人先輩に告白することは、もはや俺のルーティンになっている。
今更やめろなんて、死ねって言われているようなもんだ。
「ふっ。相変わらずぶっ飛んでんな、お前」
いつもは猫目なその瞳が、笑った時だけふにゃんと柔らかくなるのを俺は知ってる。
その笑顔に、俺の心臓がぎゅんっと締め付けられる。
これだから先輩への告白はやめられない。
「迷惑じゃないけど、俺がお前を好きになることはないよ。それでもいいのなら、まあご勝手に」
再び凛とした猫目に戻った隼人先輩は、淡々と告げる。もちろん視線すら合わせてはくれない。
それでも俺は嬉しくて、わずかに口元を緩めた。
だって『迷惑じゃない』と言ってくれたのだ。そもそも先輩が俺のことを好きになってくれるなんて、期待してない。俺はこの気持ちを伝えることができればそれでいいのだ。
だから、『迷惑じゃない』って言葉一つで気持ちはどこまでも天にのぼりそうになる。そんなこと言われたら、もっと気持ちを伝えたくなる。
わずかに口を開きかけ、いやいやだめだとすぐさま口にぎゅっと力を入れる。
だって最初に決めたから。先輩への告白は三百六十五回まで。今日は一回の予定だ。
そう、俺が先輩に告白できるのはあと三百三十七回。
その最後の一回まで、俺は先輩に「好き」を伝え続ける。
たとえ先輩が俺のことを好きにならないとわかっていても――。


