空に隕石が見えたら、アイスを食べようと思う

 それから4月になって、私は高校3年生になった。テレビには今日も隕石の話題が流れている。

『⚪︎月⚪︎日にレーダー観測を行うと発表されました。⚪︎月⚪︎日には隕石が落ちる正確な可能性が分かるとされています』

 まだ不確定な世界。でも、私はいつも通り家を出て、電車に乗り高校に行く。

「風奈、おっはよー!」
「おはよ」
「三年も風奈と同じクラスとか奇跡だよね」
「嬉しい方のね」
「お、珍しく風奈がデレた!」

 凛華が私の頬をつつきながら、腹ただしい顔で笑っている。私は仕返しに凛華の頭をペシっと叩いた。

「いたっ。もー、折角張り切ってセットした髪が崩れるじゃん!」
「毎日ちゃんとセットしてるんだ?」
「当たり前でしょ!」

 隕石の衝突がニュースになった日を思い出す。あの日も凛華の髪は綺麗にセットされていた。

「で、風奈。今日はなにするの?」
「うーん、凛華と一緒にカラオケ行きたい」
「それって今しか出来ないことか!?」
「うん、『今の私』にしか出来ないこと。だって凛華と友達なの私だけだし」
「流石に他にも友達いるわ!」

 凛華がツッコミながら大笑いしている。その笑顔を見て、この大笑いをいま目の前で見れているのも私だけだなと実感する。今の自分にしか出来ないことは人それぞれだろう。でも、後悔なんて出来たらしたくないのはみんな一緒。

「隕石って落ちる瞬間、めっちゃ明るいらしいよ」
「マジか。ギリギリ最後に甘いもの食べれるかな」
「凛華、甘いもの好きすぎでしょ。その時家にお菓子なかったらどうすんの?」
「アイスなら常にストックある!」
「それは私もあるわ。間に合うかな」
「気合いだって!」

 あの日、凛華は怖がっていたのにちゃんと髪をセットしてきた。

 あの日、家族はいつも通り生きるしかないと言った。

 あの日、先生は普通に授業をした。

 あの日、私は毎日を無駄にしたくないと思った。



 まだ見ぬ隕石へ。どうか頭の片隅くらいには覚えておいてほしい。


 私たちがここでちゃんと生きていることを。



〈了〉