清水 千代は、名門と言われる治癒一族に生まれた長女。
名家の令嬢である。
生まれた瞬間から、彼女の為に世話をする女中が三人、付きっきりとなっていた。
「良いですか。ここは妖が出るとされています。昼はもちろん、夜こそ絶対に近付いてはなりませんよ?」
外を歩く時、屋敷の近くにある森の前を通る度に使用人から耳にタコができるほど言われてきた。
『妖はいやしい』
『出会ったら殺される』
『喰われちまう…!』
妖の姿を見たことがない千代だったが、妖にまつわる悪い話は何度も聞いてきた。
その為、妖に対する恐怖心は人一倍あり、絶対に森へ近付かないという約束を守ってきた。
七歳の誕生日を迎える、今日までは。
「異能が開花しない…なぜだ! お前は、清水家の長女であろう…!」
六歳までは、誕生日を盛大に祝われてきた。
その為、千代にとっても誕生日とは嬉しい日と思って過ごしていた。
けれど、当主である千代の父は夜になっても異能が開花しない千代に目を血走らせ、拳をワナワナと震わせて怒りを露わにした。
「当主様。千代様は七歳になったばかりでございます。八歳になるまでに、目覚める…そういう事はございませんか…?」
今にも千代に掴みかかりそうになっており、女中が彼女を庇うように前に出た。

