贄の公主と降魔の王 ~黒衣を纏う花嫁は、年下王の最愛になる~

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 魔物とは、強い瘴気を放ち、それによって、致命傷を負った人間を食らう、邪悪な生き物だ。
 これを斃すためには、まず、その瘴気を吸わないように努め、特殊な製法で作られた神剣で止めをさすしか手段がない。
 どこの国でも、いつ魔物が現れてもいいように、兵を募って、討伐軍を育てているのが現状だ。

 ――しかし。
 危機感がないと、人は油断をしてしまうものだ。

 私の祖国・(モー)は、まさにそれだった。
 前回の出現から百年が経ち、私達はすっかり魔物の存在を忘れ、穏やかな日常を享受していた。
 王の末娘として、生を受けた私は母が幼い頃に亡くなったこともあり、可哀想な子だと、父から甘やかされ、十一歳になるまで好き勝手に生きてきた。
 勿論、どこに嫁いでもいいようにと、勉学に励み、多少の(まじな)い事も学んだ。
 けれど、温かい家族と周囲の人の優しさに囲まれて、だらけていたのも事実だ。
 このまま、ずっと平穏で、でも、少しだけ退屈な日々が続いていくのだろうと、何の疑いもなく信じていた。
 ……けど。
 日常が壊れるのは、あっという間だった。
 魔物は突然現れ、私の大事な物を次々に壊していった。
 私の母は亮の人間で、王とも面識があったらしく、その縁で、私は亮に逃げ、生き延びたのだ。
 けれども、昨年、亮王が身罷ってから、王太后様は私に即位したばかりの天禄様の第一王妃になり、この国の犠牲になるよう、迫った。

 その時、私は気がついたのだ。

 ――私を王妃(ぎせい)にするために、亮王は私を助けたのではないか……と。