贄の公主と降魔の王 ~黒衣を纏う花嫁は、年下王の最愛になる~

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 (リアン)の王は、降魔の王と呼ばれている。
 王の直系男子のみが扱うことのできる絶大な力で、即位後、王は討伐軍の長として、魔物を滅することを畢生の使命としている。
 建国から三百年、昨年即位したばかりの亮王は成人前の子供。
 この婚姻に王自身の意思はない。
 王の母、王太后様が私に目をつけただけのことだ。

 ――国の贄とするのに、都合がいい人材だと。

「陛下は慈悲深い。御前ではその面布(めんぷ)を取らぬよう。話すな。見るな。気安く振る舞ってはならぬ。よいな?」

 ――こくり。
 人形のように、平伏したまま固まっている、私の姿が気に入らなかったのだろう。

「はっ。まるで、葬礼のようだ。気色の悪い娘よ」
「……っ」

 激しい怒りをあらわにして、王太后様は、私の頭を高底の靴で踏み続けた。

「心得よ。穢れを我が王が目にすること自体が災い。琳娜(リンナ)。お前は「呪い」そのものじゃ」
「は……い」

 そんなことは、命じられるまでもなかった。

 ――私は一生、夫となる貴方の息子の前で顔を晒すつもりはないし、秘密を明かすつもりもない。

「仕方ない。我慢をするか。あの子が十八歳になるまで……」

 それは、お互い様だ。

 ――亮の王が成人した頃に、第一王妃の私は死ぬ。

 未成年の王が娶った王妃は、王が成人する前後に命を落とすのだ。
 これに例外はなく、三百年続く亮国の闇の部分。
 そして、こうなることは、私自らが望んだことだった。