「俺には、白花様が何故そのように思うのか…分かりません」
「えっ…」
朔の言葉に、胸がきゅっと締め付けられた。
(そうよね…こんなことで悩む私の気持ちなんて、分からないわよね)
朔の言葉にマイナスな意味で納得すると、今日の為に持ってきた書物を握る手に力が入った。
「清谷様もおっしゃっていたように、貴女と藤乃様には通ずるものがあります。二人とも、立派な治癒者ではありませんか」
その言葉は、後ろ向きな白花の背中をそっと押す優しいものだった。
「私が…ですか?」
「えぇ。初めて会った時、剛力様の傷を治し、先日は負傷した隊士の治療を施した。俺はどちらもこの目で見ました。そして、どちらも見事なお手前だったと思っています」
前を向いて言う彼の隣で歩いていたが、足が止まってしまった。
(どうして…これじゃあ、桜庭家にいた時の方がずっと楽だったかもしれない…)
表情は変わらずとも、胸が痛い。
襟元をぎゅっと握った。
虐げられていた時は、謝れば良かった。
何年も続いたから慣れてしまっていた。
我慢すれば過ぎてしまう時間。
それなのにーー。
「白花様? 歩くの速かったでしょうか?」
「いえ…私がまた、考え事をしていました」
前を歩く彼に駆け寄った。
朔の言葉は白花の心を激しく掻き乱す。
正体の分からない感情に戸惑いながらも、隣を歩くという選択以外ーー取りたくなかった。

