能面令嬢と闇の当主 〜愛のない契約結婚のはずでした〜


「…失礼します」

彼に治療を施す頃には、緊張は微塵にもなかった。
むしろ、何とかしなからばならないという責任の方が強かった。
そんな白花の様子に、隊員は目を見開いた。

「はい…お願いします」

自然と足を差し出していた。
そして、白花は患部に手を近付けるとそっと目を閉じた。

(この方は不安でたまらない…私が治さないと…私なら、治せる…)

内心でそっと唱えれば手から神秘的な温かい光がじんわりと放出された。

「これが、命の加護…」

ボソリと呟きながら見入る護。
手に伝わる熱が弱くなると、白花はゆっくりと目を開けた。
隊士の怪我は腫れがすっかり消え、彼も痛みがなくなれば怪我をしていた足で床を軽く踏み、何度か確かめた。

「すごい…! 痛くない…!」
「早い…その上、完璧な処置。さすがは命の加護者…!」

隊士は怪我が治ったことに喜び、護は興味深い対象に何度も頷いた。

「あの…治してもらったのに…先ほどは失礼な事を申しました…!」

隊士が頭を下げれば、白花は慌てたように首を横に振った。

「そんな…! 頭を上げてください。私に自信がなく、不安にさせたのは事実ですし…」
「でも、貴女の治療はすごい…まるで、藤乃様のようではないですか…!」

隊士が目を輝かせた。
しかし、初めて聞く女性の名に白花は小首を傾げた。

「…そうだ。彼女に通ずるものがある…涙の治癒師に」

隊士の言葉に護は何かを確信したように頷いた。