能面令嬢と闇の当主 〜愛のない契約結婚のはずでした〜


「仁美様。お待たせいたしました」

穏やかに話す事十数分。
運転手に声をかけられると、速度は落ちてゆっくりと停まった。
運転手が後部座席のドアを開けると、仁美に続いて三人が降りた。

「ここが…治安会」

白花は立派な門柱に刻まれた『治安会』という文字を見て、ぼそりと呟いた。
帝都の外れに広がる広大な敷地。
その一帯は高い柵に囲まれていた。
建物がいくつも建ち並び、中には黒い隊服を着た男性達が右往左往している。

「えぇ。さぁ、護さんとの時間も迫っていますし、参りましょう」

仁美が先陣を切って歩き出すと、二人は後ろをついて歩いた。
すれ違う隊員達は、物珍しそうに三人を見つめた。
だが、仁美が笑みを浮かべて会釈をしながら歩みを進めると、隊員達は頬を赤らめ、慌てて視線を逸らした。

「おや。これはこれは…甘楽様ではございませんか」
「おはようございます。服部さん」

正面から身振り手振りを大袈裟にしながら近付いてきた宗介にも、笑みを浮かべて対応する仁美。

「今日も清谷殿と逢瀬ですか?」
「あら、嫌ですわ。そのような事をおっしゃると、護さんにご迷惑をお掛けしますから」

宗介の辛口を見事に交わし、終始笑みを絶やさない仁美。