能面令嬢と闇の当主 〜愛のない契約結婚のはずでした〜


「こちらです。甘楽様のお屋敷」
「わっ…」

朔がそう告げると、右にある大きな屋敷を見上げた。
釣られるように白花も見上げた。
黒宮家よりもさらに広い敷地と堂々たる屋敷に、思わず息をのんだ。

「おはようございます。白花さん、朔さん」
「おはようございます、甘楽様」
「お、おはようございます…」

白花達が到着したのと同時に、屋敷から仁美が出てくると上品に挨拶をした。
いつも通り挨拶を交わす朔を見て、白花も慌てて頭を下げた。

「ウチの車を呼んでますから、それで参りましょう」
「手配、ありがとうございます」
「いえ。治安会への出入りは厳しいですから。お気になさらないでください」

穏やかに答えると、広い敷地に停まっている黒い高級車に乗った。
柔らかな座席に、そっと身体を預ける。
初めて座る柔らかな座席に、そっと体重を預けるように小さく身じろぎした。

(…柔らかい)

ふかふかとした上質な肌触り。
座席をじっと見つめた。

「それでは、よろしくお願い致します」
「かしこまりました。仁美様」

運転手にも丁寧に告げると、車がゆっくりと動き出した。
白花は初めて乗る車に戸惑いながらも、表情にはそれを出さない。
瞬きが多くなりながら、景色が早く移り変わる車窓に目を移した。

「ふふっ」
「いかがなさいましたか、甘楽様」
「いえ…ごめんなさい。白花さんが、とても可愛らしいなぁって」

口元に手を当て、クスクスと上品に笑う仁美。
白花はぴたりと動きが止まった。