能面令嬢と闇の当主 〜愛のない契約結婚のはずでした〜


「そんな…殿方の隣を歩くだなんて、恐れ多いです」
「いえ、俺の事をそんな風に考えなくてもーーそうだ」

白花の言葉に、生きてきた背景が見えた気がした。
ふと思い立ったような口ぶりをすると、白花は次の言葉を求めてじっと見つめた。

「俺が貴女を守る為に、そう考えてもらえませんか?」
「守る為…?」
「えぇ。後ろにいても守れます。しかし、咄嗟の判断に長けた相手なら…万が一、貴女を危険に晒してしまうかもしれない。だから、見えるところにいて欲しいのです」

帝から任された務めを果たす為ということを全面に出すと、白花は戸惑いながらも小さく頷いた。

「分かりました…失礼します」

丁寧に告げると、彼の隣に立った。
納得したように頷けば、彼は再び歩み出した。

「歩く速度は大丈夫ですか?」
「そこ、石があるので足元にお気をつけ下さい」
「もう少しで着きます。疲れていませんか?」

隣を歩く白花を気遣うように、朔は何度も声を掛けた。
その問いに白花は一つずつ、丁寧に返事をした。

「はい、大丈夫です」
「お気遣いありがとうございます」
「私は大丈夫です」

一人で歩けば十分とかからない道を、話しながら歩く事で目的地まで数分遅れた。