「坊ちゃん」
食べ始めると、女中の一人が声をかけた。
「何だ」
ぶっきらぼうに答えると、女中は目を細めてニタニタと笑みを浮かべながら口を開いた。
「坊ちゃんは、白花様のどこに惚れて求婚なさったんですか?」
「ぶほっ…!」
すました顔で食べていたが、女中の問いに咳き込んだ。
「だ、大丈夫ですか…?」
咳き込む朔の元に寄り、ハンカチで優しく拭き取る彼女の手を掴んだ。
「えっ…?」
「結構です。汚れてしまうでしょう…それより、何だその下らん質問は」
掴んでいた手を離し、女中に向ける視線が鋭くなった。
「坊ちゃんが女性を連れて来ることなんてなかったですし、しかも結婚されてるのですから…! 昨日まで、そのような素振りなかったではないですか」
女中の言葉に、彼は無言を貫いた。
「…白花様はおっしゃったのに」
「えっ…!」
突然の暴露に、白花が女中の方を見た。
「坊ちゃん。女性はね、大切にされてるって分かるだけで、自然と笑顔が増えるものなんですよ」
そう言われても、朔はしばらく口をつぐんでいた。
やがて静かに立ち上がると、ようやく口を開いた。

