能面令嬢と闇の当主 〜愛のない契約結婚のはずでした〜


「そういえば…白花様は、どうして坊ちゃんと結婚しようと思ったんだい?」
「…ふぇっ?」

突然尋ねられると、自分でも出たことのない声に口をつぐんだ。

「ちょっと、アンタ。なんて事を…でも、婆婆も気になるわ」
「坊ちゃんを幼い頃から見てるから、アタシ達は坊ちゃんの良いところをたくさん知ってる…でも」
「ちょっと。余計な事言うんじゃないよ」

シッ、と唇に指を当てた。
その一瞬の表情は険しかった。

(どうしよう…帝に言われて、なんて言えない…。朔さんは、みなさんに大切に想われているのだもの)

求められている言葉は分かる。
しかし、嘘をつきたいわけではない。
そう思い、思ったままのことを口にした。

「朔さんは、とてもお優しい方だと思ったから…です」
「「「あらぁ〜!」」」

男達に襲われて、助けてくれた事。
優しくそばに寄り添ってくれた事。
今朝あった事を、思い返すと温かい気持ちになった。

(朔さんは任務だけれど)

頭の中でそう理解しながら伝えると、女中達は満足そうに笑った。

「坊ちゃんの事、末長くよろしくお願いします」
「は、はいっ…」

うっとりとしていた女中の一人にそう言われると、思わず頷いた。

そして、まさかーー。

「…そんな事を言う人だったなんて…」

話を聞かれていたとは、この時の白花はまだ知らない。