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宮城の敷地から歩いて少しすると、役場へ着いた。
けれど、役場でのやり取りは辿り着くまでの時間より短かった。
「はい、確かに」
「よろしく頼む」
紙に筆で署名し、役人へ差し出す。
書類はあっさりと受理された。
朔が提出している後ろから背中をぼんやりと見ていた。
(これほど簡単に夫婦になれてしまうのね…)
縁談は何度も破談となっており、その先の未来を知らなかった。
事務的な手続きに嬉しいという気持ちは、当然芽生えなかった。
「参りましょう」
「…はい」
役場を出て後ろをついて歩くと、路面電車に乗った。
車窓に映る自分から、思わず目を逸らしたすぐに視線を正面に戻した。
しばらく揺られると「ここで降ります」と事務的に伝えられ、こくりと頷けば後ろをついて歩いた。
辺りは木々で生い茂っており、民家が一つも見当たらない緑豊かな場所。
しかし、歩き続けていると立派な門が見えた。
「ここです」
「…大きいですね」
「桜庭家のお屋敷も、かなりの広さだったでしょう」
敷地へ入れば、綺麗に整えられた庭が真っ先に目に入った。
屋敷というより、一つの館と呼ぶべき大きさだった。 庭も建物もあるのに、敷地はなお果てしなく広かった。
「そうだ…中には何人か女中がいます」
「そうなのですね」
「ちょっと面倒で…呼び方や振る舞いについて、あらかじめ決めておきたいのですが、よろしいでしょうか」
引き戸に手をかける前に、白花に尋ねた。

