「申し訳ありません、剛力様」
「ご令嬢の前で、失礼いたしました」
黒宮は静かに口を閉ざした。
宗介も肩をすくめ、小さく笑みを引っ込めた。
(…この方、どうして分かったのかしら)
白花は無表情。
喜怒哀楽を表現できない為、悪い方に勘違いされることはよくあった。
しかし、思っていることをピタリと当てられたのは表情をなくしてから初めてだった。
「はい! じゃあ、あとは頼むな! で、お嬢ちゃん」
剛力は先程までの空気などなかったかのように、からりと笑った。
特務隊が男達の身柄を捕らえ始めると、白花に笑いかけた。
「は、はい…?」
「オレ達と宮城へ参ろう」
「…えっ?」
剛力から出た言葉に息を飲むと、呆然とした返事をした。
宮城とは国の顔である帝の住まい。
高貴な立場の人がいるところへ行くと言われ、言葉に詰まった。
「そ、そんな…あの宮城、ですか? 帝がいらっしゃる…?」
「ん? そりゃあそうだ! 他に宮城ってあるのか?」
白花の問いにぽかんとした後、また豪快に笑う剛力。
隣で黒宮も頷いた。
白花は無表情のままではあるが、呆然とした。
この日から、白花の運命は静かに動き始める。

