能面令嬢と闇の当主 〜愛のない契約結婚のはずでした〜


「いや…貴女はたしかに『命の加護』を持っています。俺が加護者の気配を間違えるわけがない」
「そう、言われましても…」

白花に穴が開きそうになる程じっと見つめる黒宮。
端正な顔立ちをした彼に見つめられると、違和感があり視線を逸らした。

「…剛力殿。その傷、いかがなさいました?」
「んあ?」

白花の態度に小さくため息を溢し、剛力に視線を向けると腕の擦り傷に気付いた。

「あー、さっき擦りむいたか? ったく、黒宮は細かいな。こんなもん、ツバつけときゃ治る」

へらっと笑う剛力にまたため息をこぼす黒宮。

「加護者の身に何かあっては…そうだ、ご令嬢」

小言を伝えると、ハッとして白花の方を見た。

「この傷…貴女なら治せます」
「えっ…でも」

治せると言われ、心当たりがないわけではなかった。
桜庭家にいた時、弱っている動物を何事もなかったかのような状態に戻すことが出来た。
しかし、それは桜庭家の恩恵によるものーー白花はそう決めつけて躊躇った。

「まーまー! やってみてよ!」
「えぇっ…?」

軽く笑う剛力。
しかし、ここで出来ないことが証明できればこの人達の誤解も解けるはずーーそう思って、剛力の腕に両手を添えてそっと目を閉じた。

(このお方の傷、治りますように…)

じんわりと温かな光が、白花の掌から溢れ出した。