能面令嬢の契約結婚


「白花様って、何を考えていらっしゃるのか分からないわ…」
「本当ね。この家の長女でありながら、このような扱いをされて…泣きも怒りもしないのだから」

白花がいなくなった台所で、他の使用人がぼそりと呟くように言った。
使用人同然の扱いをされていても、現当主の長女。
誰かに聞かれれば、自分たちまで罰を受ける。

「これで大丈夫…かな」

裏庭に回った白花が紅葉に投げつけられた足袋を洗い、白くなったのを見て呟いた。
汚れたと言われたものの、どこが汚れているのか白花には分からない。

今日もまた、言いがかりだった。
足袋を洗い終えると、パンパンと伸ばして物干し竿の方に向かおうとすれば、ドンと人に当たった。
洗ったばかりの足袋が土の上へ落ちた。
胸がきゅっと痛んだ。
それでも足袋より先に、ぶつかった相手へ謝ろうと顔を上げた。
しかし、その人物が分かると白花はビクッと肩を震わせた。

「あら…嫌ね。その顔だけじゃなく、目まで節穴なのね」

氷のように冷たい目が白花を射抜く。
息が詰まり、喉が震えた。
白花の継母ーー(うめ)だ。

「も…申し訳ありませっ…」

最後まで言い終える前に、
パァン――。
乾いた音が庭に響いた。