能面令嬢と闇の当主 〜愛のない契約結婚のはずでした〜


☆☆☆

女性達と別れて十数分。
そよ風の心地よい季節ではあるが、歩き続けると白花の首筋にはじんわりと汗が流れた。

「まっすぐ…そうおっしゃっていたけれど、随分と遠いのね」

ハンカチを扇子のように使い、風を送って涼んだ。
木々の生い茂る木陰を見つけると、影を踏みながら街へ向かった。
道中、ぐぅと腹の音が鳴るとぴたりと止まって腹を押さえた。

(そういえば、朝ご飯を食べていない…そうだわ)

木陰になっている木の根元へ向かい、草の上にハンカチを敷いて腰を下ろした。
隣に荷物を置き、小春から貰った竹の皮を開くと大きさがそれぞれ異なる歪な形のおにぎりが姿を表した。

「あら…小春様。随分とお上手になったのね…」

おにぎりを一つ、両手で大切に持ち上げると「美味しい…」と溢した。
塩気がちょうどよく、中には梅干しが入っていた。
汗をかき始めた体が求めているもので、食べ進めていった。

「もし、お嬢さん」
「…えっ?」

話しかけられると、おにぎりを手に顔を上げた。
三人の男が立っていた。
一人は筋骨隆々。
一人は頬に十字傷。
そして中央には、鋭い眼光の男。
穏やかではない彼らの風貌に緊張が走った。