能面令嬢と闇の当主 〜愛のない契約結婚のはずでした〜


「小春様…私なんかのために、ありがとうございます」

小春が落ち着くよう、優しく背中を撫でればしゃくれ上がりながらも涙が収まってきた。

「小春も…小春も行く。白花様が行くなら、小春も…!」
「いけません」
「えっ…?」

白花はいつも、小春に優しく全てを包み込んできた。
初めての否定に、声を漏らし目を丸くした。

「小春様が今なさる事は、私を気にかける事ではありません。たくさんお勉強をなさって、将来多くの方のお役に立つ事です」

白花は小春の目を真っ直ぐ見つめた。
いつもなら、駄々をこねるところ。
小春はぎゅっと唇を噛み締めた。
いつもと違う白花の様子に、何かを悟ったようだった。
小さく首を縦に振った。

「わかりました…」
「家を出ても、私は小春様の事を未来永劫応援しております。貴女なら、きっと立派な異能者になれます」

白花の言葉を受け、またこくりと頷くと「失礼しますっ…」と言い、深く頭を下げてから部屋を出る小春。
襖を閉める直前、小春は何度も何度も振り返った。
廊下から聞こえる小春の啜り泣く声に、白花は胸を締め付けられた。

「…ごめんなさい」

白花もまた、姿が見えなくなった小春に向けてぼそりと呟いた。