「うそ…あれはぜったい、異能です。ちゆ、っていう異能…!」
「…小春様」
懸命に言ってくれるが、白花はまた静かに首を横に振った。
異能を持つ家系に生まれた子どもは、七歳の時に『異能の才』があるか試験される。
その試験で、白花に才がない事は証明されていた。
「でも、でもっ…!」
「小春様は本当にお優しいですね。あれは…異能の恩恵ですよ」
「おんけい…?」
初めて聞く言葉に小首を傾げる小春。
恩恵とは、異能者が長年暮らした土地に宿る力だ。
桜庭家には三人の異能者がいる。そのため、この屋敷の恩恵は強い。
恩恵が宿っていても、不思議ではなかった。
「…白花様、何してるの?」
納得できない様子の小春がむすっと顔を逸らした先に、白花の荷物を包んだ風呂敷が目に入った。
「私、明日この家を出ていくのです」
「えっ……!」
小春の瞳いっぱいに溜まっていた涙が、ぽたりと零れた。
一粒零れた涙は、堰を切ったように次々と溢れ出した。
「やだやだやだっ…! 白花様っ…どうしてっ…!」
首を何度も横に振り、ぽろぽろと流す涙。
その姿を見て、白花の心はギュッと苦しくなった。

