「暁臣様……これは……?」
「開けてみるといい」
ある日の穏やかな夕食後。
暁臣様から手渡されたのは、吸い込まれるような光沢を放つ、見事な漆塗りの箱だった。
両手で受け取った瞬間、ずしりとした重みが掌に伝わる。
こんな立派なものを——私が?
そっと蓋を持ち上げると、微かに木の香りが鼻をくすぐった。
中には、端正な装飾が施された数本の鉛筆と、真っ白な消しゴム。
そして、上質な紙の束が、きちんと揃えられて収められていた。
……筆記道具。
それも、私が今まで触れたことのないほど高価で、美しい道具だ。
つい先日、あんなに素晴らしい家具を用意していただいたばかりなのに。
まだ何一つ返せていないのに。
どうして、また——。
「……朝霞家のことを調べさせてもらった」
暁臣様の声が、夕食後の静けさに落ち、思わず背筋を固くする。
「すみれは一度も学校に通ったことがないな?」
「……っ、はい……」
図星を刺され、私は肩を竦め、俯いた。
家の中では、ずっと加護を持つ妹の百合と比較され続け、私の存在はすべてが『無駄』だとされてきた。
父も継母も、『無華』である私が外に出ることを極端に嫌い、世間の目から隠し続けてきたのだ。
学校に通うなどと言う夢のような話。
口に出すことさえ、許されなかった。
「開けてみるといい」
ある日の穏やかな夕食後。
暁臣様から手渡されたのは、吸い込まれるような光沢を放つ、見事な漆塗りの箱だった。
両手で受け取った瞬間、ずしりとした重みが掌に伝わる。
こんな立派なものを——私が?
そっと蓋を持ち上げると、微かに木の香りが鼻をくすぐった。
中には、端正な装飾が施された数本の鉛筆と、真っ白な消しゴム。
そして、上質な紙の束が、きちんと揃えられて収められていた。
……筆記道具。
それも、私が今まで触れたことのないほど高価で、美しい道具だ。
つい先日、あんなに素晴らしい家具を用意していただいたばかりなのに。
まだ何一つ返せていないのに。
どうして、また——。
「……朝霞家のことを調べさせてもらった」
暁臣様の声が、夕食後の静けさに落ち、思わず背筋を固くする。
「すみれは一度も学校に通ったことがないな?」
「……っ、はい……」
図星を刺され、私は肩を竦め、俯いた。
家の中では、ずっと加護を持つ妹の百合と比較され続け、私の存在はすべてが『無駄』だとされてきた。
父も継母も、『無華』である私が外に出ることを極端に嫌い、世間の目から隠し続けてきたのだ。
学校に通うなどと言う夢のような話。
口に出すことさえ、許されなかった。



