呆れたように息を吐いたあと、暁臣様は私の頬を包み込んだ。
世界で私だけに許された、手袋越しではない、肌の熱。
その熱が触れた瞬間、張り詰めていた心の氷が、一気に溶け出して溢れた。
視界が急激に熱く、潤んでいく。
「そんなことはあるわけがない」
その断言が、私の胸の底まで落ちる。
『捨てられる』と言う想像が、ほんの少しだけ遠ざかる。
「……まいったな」
暁臣様の指が、私の目元に触れそうで触れない距離をなぞる。
「泣かせたくないのに、今のすみれの潤む瞳は、あまりにも美しすぎる」
私の『無華』の証である、左右で色の違う瞳。
実の家族からさえ化け物のように疎まれてきたこの瞳を、そんなふうに慈しんでくれたのは、世界中で暁臣様が初めてだった。
人に見られることがあんなに怖かったのに、彼に見つめられる時だけは、なぜか恐怖が消えていく。
さっきまでは『嫌われた』と言う思い込みで顔が上げられなかったのに。
それが勘違いだと知った今も、別の、もっと熱い感情のせいで顔が上げられなくなってしまう。
「すみれ」
名を呼ばれるだけで、胸が跳ねる。
「もう一度、俺に聞かせてくれ。俺にできることはないか?」
いいのだろうか……本当に、こんな私なんかが我ままを言っても。
お忙しい暁臣様の大切な時間を、奪うようなお願いを口にしても。
怖い。
でも、昨夜『なぜ頼らない』と言われた声が、まだ耳の奥に残っている。
「もし、すみれがもう耐えられないと言うのなら、妃教育など今すぐ中止しても——」
「あ……あの……中止は、嫌です」
世界で私だけに許された、手袋越しではない、肌の熱。
その熱が触れた瞬間、張り詰めていた心の氷が、一気に溶け出して溢れた。
視界が急激に熱く、潤んでいく。
「そんなことはあるわけがない」
その断言が、私の胸の底まで落ちる。
『捨てられる』と言う想像が、ほんの少しだけ遠ざかる。
「……まいったな」
暁臣様の指が、私の目元に触れそうで触れない距離をなぞる。
「泣かせたくないのに、今のすみれの潤む瞳は、あまりにも美しすぎる」
私の『無華』の証である、左右で色の違う瞳。
実の家族からさえ化け物のように疎まれてきたこの瞳を、そんなふうに慈しんでくれたのは、世界中で暁臣様が初めてだった。
人に見られることがあんなに怖かったのに、彼に見つめられる時だけは、なぜか恐怖が消えていく。
さっきまでは『嫌われた』と言う思い込みで顔が上げられなかったのに。
それが勘違いだと知った今も、別の、もっと熱い感情のせいで顔が上げられなくなってしまう。
「すみれ」
名を呼ばれるだけで、胸が跳ねる。
「もう一度、俺に聞かせてくれ。俺にできることはないか?」
いいのだろうか……本当に、こんな私なんかが我ままを言っても。
お忙しい暁臣様の大切な時間を、奪うようなお願いを口にしても。
怖い。
でも、昨夜『なぜ頼らない』と言われた声が、まだ耳の奥に残っている。
「もし、すみれがもう耐えられないと言うのなら、妃教育など今すぐ中止しても——」
「あ……あの……中止は、嫌です」



