【Web版】無華の花嫁2~花開く乙女は、お妃教育の先で黒薔薇の殿下に溺愛される~

昨日は、一度も暁臣様にお会いすることができなかった。

朝食はもちろん、先ほど一人分だけ運ばれてきた昼食のトレイを見て、胸の奥が冷たく冷え切っていくのを感じる。
今日も、私は一人で食事を摂れと言うことなのだろう。
彼を失望させ、怒らせてしまったのだから、当然の報いなのかもしれない。

時折、廊下で扉が開閉する微かな気配がするたびに、偶然を装って部屋を飛び出そうかとも思った。
けれど、もし顔を合わせた時に彼が冷ややかな視線を向けたら——
そう想像するだけで、足が石にでもなったように動かなくなってしまった。
会いたいのに、会うのが怖い。
胸の奥が、矛盾で裂けそうだ。

やるせない想いを抱え、庭園へとふらふらと歩み出た。
冷たい空気が肺に入り、少しだけ頭が冴える。
……それでも、怖さは消えない。

足元には、私の名と同じ『菫』の花が、健気に、けれど気高く咲いている。
『無華』と言う欠陥を持って生まれた私よりも、この小さな花の方が、よほど完成された美しさを持っているように見えてしまう。
この花は、咲いているだけで許されるのに。
私は、ここにいるだけで、いつも咎められる気がする。

「それでも……たとえ、何の役にも立たなくても……。暁臣様の、お側にいたいんです……」

祈るように、そっと瞼を閉じた、その瞬間だった。

背後から、熱を帯びた大きな手にぐいと引き寄せられ、私は驚きのあまりその場に尻餅をついてしまった。
驚愕に目を見開く暇もなく、掌が私の頭を優しく撫で、力強い腕が身体を丸ごと包み込む。
息が止まった。
——こんな抱き方、私を抱きしめるこの腕を、私は知っている。

そんな……いつの間に、暁臣様が……。