今日は、暁臣様もお休みだと伺っていた。
身支度を整え、いつお呼びがかかってもいいように、部屋の椅子に座って静かに待つ。
いつもの休日であれば、少し遅めの朝食を共に摂ろうと、彼のお部屋へ招かれるはずの時間。
それが音もなく、するりと過ぎていく。
時計の針の音だけが、やけに大きい。
呼ばれない。
呼ばれないまま、朝が遠ざかる。
——昨夜の『舌打ち』が、また胸の奥で鈍く痛んだ。
「すみれ様。ご朝食をこちらへ置いておきますね」
「……あ。ありがとうございます」
部屋に運ばれてきたのは、以前私が好きだと言った、大粒の梅干しが添えられたお粥。
お出汁の優しい香りが、湯気と共にふわりと立ち上る。
それだけで、涙が出そうになる。
きっと、昨日倒れた私のために、暁臣様が細かく指示を出してくださったのかもしれない。
あんなに深く、慈悲深いお方なのに。
それなのに、どうして私は彼の言葉を真っすぐに信じきることができないのだろう。
震える手で匙を持ち、用意された食事を口へと運ぶ。
お出汁が効いていて、体の芯から温まるようで、とても美味しい。
——美味しい、はずなのに。
保護された直後。
まだ身体が思うように動かなかった私に、暁臣様が自ら食べさせてくれた時の幸福。
あの時、匙が口元に近づくだけで、私は泣きそうになった。
『私にも食べさせてくれる人がいる』と言う事実が、信じられなかったから。
あの時の味と同じはずなのに、どうしてだろう。
今は、あの時の方がずっと美味しかったような気がしてしまう。
誰かと共に食事を摂る、あの奇跡のように優しい時間を知ってしまった後では……
たった一人の食事と言うものが、これほどまでに味気なく、寂しいものに変わってしまうなんて。
湯気はあたたかいのに、胸の奥が冷える。
一人で食べる食事は、以前はどのような感じだっただろうか。
ずっと一人だった。
誰かに見つからないよう、息を潜めて食べるのが当たり前だった。
冷たい蔵の隅で、音を立てないように。
咀嚼の音さえ怖くて、喉に押し込むように。
それなのに、今の私は、たった一日の不在に耐えられないほど、彼に依存してしまっている。
『依存』と言う言葉が、自分の中で嫌な形をして膨らむ。
でも、否定できない。
暁臣様がいないだけで、私はこんなにも不安になる。
身支度を整え、いつお呼びがかかってもいいように、部屋の椅子に座って静かに待つ。
いつもの休日であれば、少し遅めの朝食を共に摂ろうと、彼のお部屋へ招かれるはずの時間。
それが音もなく、するりと過ぎていく。
時計の針の音だけが、やけに大きい。
呼ばれない。
呼ばれないまま、朝が遠ざかる。
——昨夜の『舌打ち』が、また胸の奥で鈍く痛んだ。
「すみれ様。ご朝食をこちらへ置いておきますね」
「……あ。ありがとうございます」
部屋に運ばれてきたのは、以前私が好きだと言った、大粒の梅干しが添えられたお粥。
お出汁の優しい香りが、湯気と共にふわりと立ち上る。
それだけで、涙が出そうになる。
きっと、昨日倒れた私のために、暁臣様が細かく指示を出してくださったのかもしれない。
あんなに深く、慈悲深いお方なのに。
それなのに、どうして私は彼の言葉を真っすぐに信じきることができないのだろう。
震える手で匙を持ち、用意された食事を口へと運ぶ。
お出汁が効いていて、体の芯から温まるようで、とても美味しい。
——美味しい、はずなのに。
保護された直後。
まだ身体が思うように動かなかった私に、暁臣様が自ら食べさせてくれた時の幸福。
あの時、匙が口元に近づくだけで、私は泣きそうになった。
『私にも食べさせてくれる人がいる』と言う事実が、信じられなかったから。
あの時の味と同じはずなのに、どうしてだろう。
今は、あの時の方がずっと美味しかったような気がしてしまう。
誰かと共に食事を摂る、あの奇跡のように優しい時間を知ってしまった後では……
たった一人の食事と言うものが、これほどまでに味気なく、寂しいものに変わってしまうなんて。
湯気はあたたかいのに、胸の奥が冷える。
一人で食べる食事は、以前はどのような感じだっただろうか。
ずっと一人だった。
誰かに見つからないよう、息を潜めて食べるのが当たり前だった。
冷たい蔵の隅で、音を立てないように。
咀嚼の音さえ怖くて、喉に押し込むように。
それなのに、今の私は、たった一日の不在に耐えられないほど、彼に依存してしまっている。
『依存』と言う言葉が、自分の中で嫌な形をして膨らむ。
でも、否定できない。
暁臣様がいないだけで、私はこんなにも不安になる。



