毒婦の嫁入り~妹に騙された姉は、呪われた軍神の契約花嫁として求められる~

私の手の上に旦那様の手が重なる。
その手は、熱かった。

「ここに触れられるのは、慣れない」
「嫌でしたか」
「嫌なら、止めている」

それだけの言葉に、頬が熱くなる。
指先を離そうとした。けれど旦那様の手が、それを許さないようにそっと私を押さえる。

「深幸」
「はい」
「お前が、妻だと言ってくれた時、俺は救われた」

旦那様の声が、少しだけ掠れた。

息が止まる。
何を返せばいいのかわからない。
ただ、指先の下にある白い傷痕と、その奥で鳴る鼓動だけがやけにはっきりと伝わってくる。

「私は……ただ、離したくなかっただけです」
「なら、これからも離すな」

ようやくそれだけ言うと、旦那様は目を細めた。
その言葉に、胸がいっぱいになる。
私は小さく頷き、白い傷痕にそっと掌を重ねた。