神前の儀式からしばらくの間、屋敷の空気は変わった。
それまで当然のように私の腹の宿し紋を祝っていた者たちは、戸惑ったように目を伏せる。
老女中は何度か私の前に来ては、言葉を探すように唇を震わせ、結局何も言わずに下がっていった。
誰も、私に「誉れ」とは言わなくなった。
旦那様は変わらず、毎晩私の隣で眠った。
けれど、その寝息は以前よりも静かだった。
胸元に残った白い傷痕を、時折、無意識に押さえている。
「痛みますか」
ある夜、思い切って尋ねると、旦那様は少しだけ目を伏せた。
「痛みではない」
「では……」
「長く、そこにあったものがなくなった。身体がまだ、慣れていないのだろう」
その言葉に、私は胸の奥が痛くなる。
私にとっては恐ろしい呪いだった。
けれど旦那様にとっては、生まれた時から身の内にあったものでもある。
痛みも、恐れも、責務も、すべて当たり前として生きてきたのだ。
「触れても、よろしいですか」
「……ああ」
そっと手を伸ばす。
寝衣の襟元から覗く胸の上。黒い蔦の誓痕があった場所には、淡く白い傷痕が残っている。
指先で触れると、旦那様の身体がわずかに強張った。
「痛みますか」
「いや」
「本当に?」
それまで当然のように私の腹の宿し紋を祝っていた者たちは、戸惑ったように目を伏せる。
老女中は何度か私の前に来ては、言葉を探すように唇を震わせ、結局何も言わずに下がっていった。
誰も、私に「誉れ」とは言わなくなった。
旦那様は変わらず、毎晩私の隣で眠った。
けれど、その寝息は以前よりも静かだった。
胸元に残った白い傷痕を、時折、無意識に押さえている。
「痛みますか」
ある夜、思い切って尋ねると、旦那様は少しだけ目を伏せた。
「痛みではない」
「では……」
「長く、そこにあったものがなくなった。身体がまだ、慣れていないのだろう」
その言葉に、私は胸の奥が痛くなる。
私にとっては恐ろしい呪いだった。
けれど旦那様にとっては、生まれた時から身の内にあったものでもある。
痛みも、恐れも、責務も、すべて当たり前として生きてきたのだ。
「触れても、よろしいですか」
「……ああ」
そっと手を伸ばす。
寝衣の襟元から覗く胸の上。黒い蔦の誓痕があった場所には、淡く白い傷痕が残っている。
指先で触れると、旦那様の身体がわずかに強張った。
「痛みますか」
「いや」
「本当に?」



