「旦那様!」
「……灼けない」
掠れた声で、旦那様が呟く。
「もう、灼かれない」
私は震える手で、自分の下腹部に触れた。
熱は消えていた。
宿し紋も、もうない。ただ、腹の奥で小さな命が、確かに動いている。
涙が落ちた。
今度は、怖さだけではなかった。
御簾の向こうで、誰かが息を呑む気配がした。神職たちは顔を失い、親族たちは膝をついたまま動けない。
旦那様は私を支えながら立ち上がると、御簾の方へ深く頭を下げた。
「一条の忠義は、これまで通りお上に捧げます。ですが、妻と子の命まで差し出す忠義は、ここで終わりにいたします」
静かな声だった。
けれど、誰も遮れなかった。
旦那様は私の手を取り、御前に背を向けると、白打掛の裾が、神前の白砂を静かに払った。
私はその手を握り返す。
契約のために結ばれたはずの手が、今はもう、私をどこにも戻さないと告げているようだった。
「……灼けない」
掠れた声で、旦那様が呟く。
「もう、灼かれない」
私は震える手で、自分の下腹部に触れた。
熱は消えていた。
宿し紋も、もうない。ただ、腹の奥で小さな命が、確かに動いている。
涙が落ちた。
今度は、怖さだけではなかった。
御簾の向こうで、誰かが息を呑む気配がした。神職たちは顔を失い、親族たちは膝をついたまま動けない。
旦那様は私を支えながら立ち上がると、御簾の方へ深く頭を下げた。
「一条の忠義は、これまで通りお上に捧げます。ですが、妻と子の命まで差し出す忠義は、ここで終わりにいたします」
静かな声だった。
けれど、誰も遮れなかった。
旦那様は私の手を取り、御前に背を向けると、白打掛の裾が、神前の白砂を静かに払った。
私はその手を握り返す。
契約のために結ばれたはずの手が、今はもう、私をどこにも戻さないと告げているようだった。



