この日、お上の前で懐妊の報告と、神前の儀式が執り行われる。
私が身に纏っていたのは、純白の白打掛。
誰も参列しなかった婚儀の際に実家から着ていた、なんの装飾も施されていない最低限のていを成した白無垢とはまったく違う。
白糸で模様が施されている豪奢なもの。
白地に白糸で縫われた鶴と藤は、正面から見るとほとんど浮かばない。
けれど歩くたび、光の角度が変わるたびに、袖や裾に模様が淡く現れる。
清らかというより、すべてを覆い隠すための白に見えた。
この下に、黒い宿し紋がある。
これが済んだら、本当にこの子の運命が決まってしまう。
それが怖くて仕方がないのに、旦那様の手は私の震えを宥めるように、手を握ってくれる。
その温もりだけを頼りに、お上の御前に向かって歩く。
白い砂利を踏む音が、やけに大きく響いた。
御前の間は、祝宴の間とは比べものにならないほど静かだった。奥には白絹を垂らした御簾があり、その向こうにお上がおわすのだと聞かされている。
左右には一条家の親族と、神職たち。少し離れたところには、安土家の者たちの姿もあった。
父と母、花乃、そして隆弘様。
視線が合いそうになり、私はすぐに目を伏せた。胸の奥が冷たくなる。けれど、隣に立つ旦那様の手が、私の手を握り直してくれた。
「顔色が悪い」
「……大丈夫です」
小さく答えると、旦那様は何も言わず、ただ親指で私の手の甲をそっと撫でた。
それだけで、震えていた指先が少しだけ落ち着く。
「これより、次代の軍神を宿されし奥方様の宿し紋を神前にて改め、御子へ誓痕を正式に授ける儀を執り行う」
神職の声が高らかに響く。
私が身に纏っていたのは、純白の白打掛。
誰も参列しなかった婚儀の際に実家から着ていた、なんの装飾も施されていない最低限のていを成した白無垢とはまったく違う。
白糸で模様が施されている豪奢なもの。
白地に白糸で縫われた鶴と藤は、正面から見るとほとんど浮かばない。
けれど歩くたび、光の角度が変わるたびに、袖や裾に模様が淡く現れる。
清らかというより、すべてを覆い隠すための白に見えた。
この下に、黒い宿し紋がある。
これが済んだら、本当にこの子の運命が決まってしまう。
それが怖くて仕方がないのに、旦那様の手は私の震えを宥めるように、手を握ってくれる。
その温もりだけを頼りに、お上の御前に向かって歩く。
白い砂利を踏む音が、やけに大きく響いた。
御前の間は、祝宴の間とは比べものにならないほど静かだった。奥には白絹を垂らした御簾があり、その向こうにお上がおわすのだと聞かされている。
左右には一条家の親族と、神職たち。少し離れたところには、安土家の者たちの姿もあった。
父と母、花乃、そして隆弘様。
視線が合いそうになり、私はすぐに目を伏せた。胸の奥が冷たくなる。けれど、隣に立つ旦那様の手が、私の手を握り直してくれた。
「顔色が悪い」
「……大丈夫です」
小さく答えると、旦那様は何も言わず、ただ親指で私の手の甲をそっと撫でた。
それだけで、震えていた指先が少しだけ落ち着く。
「これより、次代の軍神を宿されし奥方様の宿し紋を神前にて改め、御子へ誓痕を正式に授ける儀を執り行う」
神職の声が高らかに響く。



