宴の半ば、ふと目眩を覚え、そっと胸に手を当てた。
それに気づいた旦那様が、すぐに私の耳元に顔を寄せる。
「顔色が悪い。もう休め」
「でも、まだ皆様が……」
「お前の身体の方が大事だ」
そう言うと、旦那様は皆に向き直り、はっきりとした声で告げた。
「妻はここで失礼する」
言うが早いか、旦那様自らが立ち上がる。
「御当主自ら送らずとも、女中に任せれば……」
「妻を送るのに、誰の許しがいる」
親族の一人が慌てて止めに入る。それに対し、旦那様は一切の迷いなく答えた。
その言葉に、宴の間がしんと静まり返る。
旦那様に支えられながら静かに立ち上がり、一礼をすると部屋を後にする。
視界の端に、呆然とこちらを見つめる花乃の顔が映った気がした。
かつて「毒婦」と呼ばれ、追い出されるように嫁いだ娘が、今は誰よりも大切に扱われている。
その事実だけが、静まり返った宴の間に、はっきりと刻まれていった。
「無理はしてないか?」
「はい……大丈夫です」
「では、俺は祝宴の場に戻る」
きっと今日の祝宴は朝方まで続くのだろう。
今日は何日振りかもわからない、一人で眠ることになる。
「先に寝ていて構わない」
先に……?
その言葉に、旦那様はこの夜を私一人にしないおつもりなんだということがわかった。
「はい……では、お言葉に甘えさせていただきます」
そう告げられると、取られていた手がゆっくり離れていく。
一瞬、その手が私に再び伸ばされそうになった気がするけれど、たぶん見間違いだろう。
それに気づいた旦那様が、すぐに私の耳元に顔を寄せる。
「顔色が悪い。もう休め」
「でも、まだ皆様が……」
「お前の身体の方が大事だ」
そう言うと、旦那様は皆に向き直り、はっきりとした声で告げた。
「妻はここで失礼する」
言うが早いか、旦那様自らが立ち上がる。
「御当主自ら送らずとも、女中に任せれば……」
「妻を送るのに、誰の許しがいる」
親族の一人が慌てて止めに入る。それに対し、旦那様は一切の迷いなく答えた。
その言葉に、宴の間がしんと静まり返る。
旦那様に支えられながら静かに立ち上がり、一礼をすると部屋を後にする。
視界の端に、呆然とこちらを見つめる花乃の顔が映った気がした。
かつて「毒婦」と呼ばれ、追い出されるように嫁いだ娘が、今は誰よりも大切に扱われている。
その事実だけが、静まり返った宴の間に、はっきりと刻まれていった。
「無理はしてないか?」
「はい……大丈夫です」
「では、俺は祝宴の場に戻る」
きっと今日の祝宴は朝方まで続くのだろう。
今日は何日振りかもわからない、一人で眠ることになる。
「先に寝ていて構わない」
先に……?
その言葉に、旦那様はこの夜を私一人にしないおつもりなんだということがわかった。
「はい……では、お言葉に甘えさせていただきます」
そう告げられると、取られていた手がゆっくり離れていく。
一瞬、その手が私に再び伸ばされそうになった気がするけれど、たぶん見間違いだろう。



