毒婦の嫁入り~妹に騙された姉は、呪われた軍神の契約花嫁として求められる~

「お姉様! よろしかったらお屋敷を案内していただけない?」
「お屋敷を……?」
「えぇ! 安土ではこんなに広いお屋敷、見たことありませんもの。上の階も行ってみたいし、お庭も……」
「だめだ」

花乃の言葉を旦那様が遮る。

「屋敷は階段も多い、庭には段差もある。許可することはできない」
「旦那様。少しくらいなら……」
「転んだらどうする。せめて俺と一緒でなければ許可はできない」

妊娠が判明してからの旦那様は、三階にあった寝所を、階段を気にして一階に移すほど私を心配している。

「花乃。私だけでなく、旦那様まで席を外すことはできないわ」
「でもっ……」

花乃の顔から、みるみる血の気が引いていくのがわかった。
軍神に嫁ぐことを恐れ、姉に押し付けたはずの結婚。
その先にあったのは、恐怖などではなく、これほどまでに大切にされる場所だった。

自分が何を手放したのか。
花乃はこの時、初めてその大きさに気づいたのかもしれない。