廊下を進む間、手は離されなかった。
すれ違う使用人たちが深く頭を下げる。その視線に、以前のような物珍しさはない。
宴の間に入ると、案の定、そこには実家の者たちの姿が。
父と母の硬い表情。そして――花乃と、私の元婚約者であり、今は花乃の婚約者である、隆弘様がいた。
「お姉様……」
花乃の声には、いつものような甘さがない。
その視線は私にではなく、隣に立つ旦那様に向けられていた。
呪われた武士。血も涙もない軍神。鬼神とすら呼ばれる男。
そう聞かされていたはずの旦那様は、若く、端正な顔立ちで、身のこなしには一切の隙がない。
しかもその旦那様は、宴の間を歩く私の歩幅を常に気にして、当たり前のように合わせていた。
席に着く前には、私の袖がどこにも引っかからぬよう、そっと払う。
運ばれてきた冷えた飲み物には目もくれず、すぐに人払いをして温かいものに替えさせる。
香の強い膳が置かれれば、一言も発さぬまま、それを静かに下げさせた。
一つ一つは、些細な仕草だった。
けれどその些細さの一つ一つに、私への気遣いが滲んでいる。
これらは今日に始まったことではなく、私の懐妊が判明してから常だった。
宴が進んだころ、花乃が私の元にやってくる。
すれ違う使用人たちが深く頭を下げる。その視線に、以前のような物珍しさはない。
宴の間に入ると、案の定、そこには実家の者たちの姿が。
父と母の硬い表情。そして――花乃と、私の元婚約者であり、今は花乃の婚約者である、隆弘様がいた。
「お姉様……」
花乃の声には、いつものような甘さがない。
その視線は私にではなく、隣に立つ旦那様に向けられていた。
呪われた武士。血も涙もない軍神。鬼神とすら呼ばれる男。
そう聞かされていたはずの旦那様は、若く、端正な顔立ちで、身のこなしには一切の隙がない。
しかもその旦那様は、宴の間を歩く私の歩幅を常に気にして、当たり前のように合わせていた。
席に着く前には、私の袖がどこにも引っかからぬよう、そっと払う。
運ばれてきた冷えた飲み物には目もくれず、すぐに人払いをして温かいものに替えさせる。
香の強い膳が置かれれば、一言も発さぬまま、それを静かに下げさせた。
一つ一つは、些細な仕草だった。
けれどその些細さの一つ一つに、私への気遣いが滲んでいる。
これらは今日に始まったことではなく、私の懐妊が判明してから常だった。
宴が進んだころ、花乃が私の元にやってくる。



