祝宴の日、金の彩色が施された打掛に身を包む。
身重の体を気遣い、あまり派手すぎないよう仕立てられてはいるものの、一目で格式の高さがわかる意匠。
「凄い……こんな打掛初めて見ました……」
「奥様のお美しいお顔には、引き立て役にしかなりません」
女中にそう言われ、鏡に映る自分を見て小さく息を呑む。
毒婦と貶められ、たった一人で嫁がされ、契約だけの妻と言われた私が、今はこうして一条家の奥方として装っている。
「準備はどうだろうか?」
そう言いながら入ってきた旦那様が、はっとした顔をされ、立ち止まる。
そのまま、固まったように動かない。
「旦那様?」
「いや、すまない。行こうか」
手を差し伸べられる。
一瞬何の手かわからずに、手と旦那様の顔を交互に見つめてしまう。
「……足元が危ない。手を」
そう言われ、おずおずと手を伸ばす。
昨夜、頼んだことを覚えていてくださったのだろうか。
何度も肌を合わせ、身体に触れられてきたのに。そういえば手を握ったことすらなかった。
たかが手を取ることがなぜこんなにも緊張するのだろうか。
初めて取ったその手は、想像以上に大きく力強くて、温かいことを初めて知った。
「深幸」
部屋を出る直前、旦那様が私の名を呼んだ。
まだ慣れない呼び方に、胸が跳ねる。
「はい」
「隣に」
それだけ言われて、私は小さく頷く。
旦那様の後ろではなく、隣へ。
足元の打掛を踏まないように気をつけながら、一歩、並ぶ。
身重の体を気遣い、あまり派手すぎないよう仕立てられてはいるものの、一目で格式の高さがわかる意匠。
「凄い……こんな打掛初めて見ました……」
「奥様のお美しいお顔には、引き立て役にしかなりません」
女中にそう言われ、鏡に映る自分を見て小さく息を呑む。
毒婦と貶められ、たった一人で嫁がされ、契約だけの妻と言われた私が、今はこうして一条家の奥方として装っている。
「準備はどうだろうか?」
そう言いながら入ってきた旦那様が、はっとした顔をされ、立ち止まる。
そのまま、固まったように動かない。
「旦那様?」
「いや、すまない。行こうか」
手を差し伸べられる。
一瞬何の手かわからずに、手と旦那様の顔を交互に見つめてしまう。
「……足元が危ない。手を」
そう言われ、おずおずと手を伸ばす。
昨夜、頼んだことを覚えていてくださったのだろうか。
何度も肌を合わせ、身体に触れられてきたのに。そういえば手を握ったことすらなかった。
たかが手を取ることがなぜこんなにも緊張するのだろうか。
初めて取ったその手は、想像以上に大きく力強くて、温かいことを初めて知った。
「深幸」
部屋を出る直前、旦那様が私の名を呼んだ。
まだ慣れない呼び方に、胸が跳ねる。
「はい」
「隣に」
それだけ言われて、私は小さく頷く。
旦那様の後ろではなく、隣へ。
足元の打掛を踏まないように気をつけながら、一歩、並ぶ。



