食べられるものは日によって変わった。
昨日は平気だった粥が、翌日には湯気だけで胸を悪くする。
柑橘なら大丈夫だと思ったら、口に入れた瞬間、酸味が喉に刺さって涙が出た。
そんな私を見ても、旦那様は一度も責めなかった。
「下げろ」
「旦那様、でも……」
「食べられないものを前に置くな」
その言葉だけで、膳はすぐに下げられる。
代わりに、冷ました葛湯や、薄く切った梨、塩を少しだけ振った瓜が運ばれてきた。
そのすべてを、旦那様はまず自分で匂いを確かめる。
「これはどうだ」
「……少しなら」
「少しでいい」
少しでいい。
その言葉が、こんなにも優しく響くものだと初めて知った。
安土にいた頃、食事を残せば叱られた。花乃が食べきれないものは私の膳に回され、私はそれを残すことを許されなかった。
だから、食べられない自分が情けなくて、申し訳なくて仕方がなかった。
けれど旦那様は、私が一口食べるだけで、安堵したように息を吐く。
そのたびに、胸の中に触れ慣れない温かさが溜まっていった。
昨日は平気だった粥が、翌日には湯気だけで胸を悪くする。
柑橘なら大丈夫だと思ったら、口に入れた瞬間、酸味が喉に刺さって涙が出た。
そんな私を見ても、旦那様は一度も責めなかった。
「下げろ」
「旦那様、でも……」
「食べられないものを前に置くな」
その言葉だけで、膳はすぐに下げられる。
代わりに、冷ました葛湯や、薄く切った梨、塩を少しだけ振った瓜が運ばれてきた。
そのすべてを、旦那様はまず自分で匂いを確かめる。
「これはどうだ」
「……少しなら」
「少しでいい」
少しでいい。
その言葉が、こんなにも優しく響くものだと初めて知った。
安土にいた頃、食事を残せば叱られた。花乃が食べきれないものは私の膳に回され、私はそれを残すことを許されなかった。
だから、食べられない自分が情けなくて、申し訳なくて仕方がなかった。
けれど旦那様は、私が一口食べるだけで、安堵したように息を吐く。
そのたびに、胸の中に触れ慣れない温かさが溜まっていった。



