その夜以来、毎晩同じ褥で眠るようになった。
何をするわけでもない。ただ、旦那様の腕の中で眠るだけ。
それでも、不思議なほどよく眠れた。
眠れるようになったはずなのに、目が覚める夜もあった。
宿し紋の熱が気になって、息が浅くなる。
この子が、私の中でちゃんと生きているのか。
いつか本当に、お上に差し出されてしまうのか。
考え始めると、喉の奥に小さな石が詰まったようになる。
そんな時、旦那様はいつも気づいた。
「眠れないのか」
「……申し訳ありません。起こしてしまいましたか」
「眠っていなかった」
背中に回った腕が、少しだけ強くなる。
腹ではなく、背中。それが不思議で、たまらなかった。
「旦那様は、子が心配なのではないのですか」
「心配だ」
胸が小さく沈む。
やはり、そうなのだ。
「だが、今震えているのはお前だろう」
「私は……」
「何も言わなくていい」
そう言われると、余計に言葉が出なくなった。
暗がりの中、旦那様の顔はよく見えない。
けれど、背に触れる手はひどく丁寧だった。何かを宥めるように、何度も、ゆっくりと背を撫でる。
目の奥が熱くなる。
泣きたくない。泣いたら、すべて許されたように縋ってしまう。
黙っている私の髪に、旦那様の吐息が触れた。
「すまない。俺は、お前に謝ってばかりだな」
その声はあまりに小さくて、聞き間違いかと思った。
返事ができない。
旦那様はそれ以上言わず、ただ私を抱いていた。
その腕の中で、いつの間にかまた眠っていた。
朝になると、旦那様の姿はいつも通りなかった。
けれど枕元には、白湯が入った小さな湯呑みが置かれていた。
触れると、まだほんのり温かい。誰が置いたのか、尋ねなくてもわかった。
何をするわけでもない。ただ、旦那様の腕の中で眠るだけ。
それでも、不思議なほどよく眠れた。
眠れるようになったはずなのに、目が覚める夜もあった。
宿し紋の熱が気になって、息が浅くなる。
この子が、私の中でちゃんと生きているのか。
いつか本当に、お上に差し出されてしまうのか。
考え始めると、喉の奥に小さな石が詰まったようになる。
そんな時、旦那様はいつも気づいた。
「眠れないのか」
「……申し訳ありません。起こしてしまいましたか」
「眠っていなかった」
背中に回った腕が、少しだけ強くなる。
腹ではなく、背中。それが不思議で、たまらなかった。
「旦那様は、子が心配なのではないのですか」
「心配だ」
胸が小さく沈む。
やはり、そうなのだ。
「だが、今震えているのはお前だろう」
「私は……」
「何も言わなくていい」
そう言われると、余計に言葉が出なくなった。
暗がりの中、旦那様の顔はよく見えない。
けれど、背に触れる手はひどく丁寧だった。何かを宥めるように、何度も、ゆっくりと背を撫でる。
目の奥が熱くなる。
泣きたくない。泣いたら、すべて許されたように縋ってしまう。
黙っている私の髪に、旦那様の吐息が触れた。
「すまない。俺は、お前に謝ってばかりだな」
その声はあまりに小さくて、聞き間違いかと思った。
返事ができない。
旦那様はそれ以上言わず、ただ私を抱いていた。
その腕の中で、いつの間にかまた眠っていた。
朝になると、旦那様の姿はいつも通りなかった。
けれど枕元には、白湯が入った小さな湯呑みが置かれていた。
触れると、まだほんのり温かい。誰が置いたのか、尋ねなくてもわかった。



