毒婦の嫁入り~妹に騙された姉は、呪われた軍神の契約花嫁として求められる~

「だからこれは、そんな私に下された罰なのかもしれません」
「違う」

被せるように返された言葉に、視線を上げる。

「罰を受けるべき者がいるとすれば、それは俺だ。何も知らなかったとはいえ、お前を契約で縛った。子を成せば終わるなどと、愚かなことを言った。お前とその子が罰を受ける理由など、どこにもない」

その言葉に、喉の奥が閉まり目の奥が熱くなる。
やがて堪えきれずに、涙が一筋だけ頬を伝うのがわかった。
これ以上は泣かない。私は被害者などではないのだから。

「……それでも、これで旦那様との契約は果たせたことになりますよね」

その言葉に、旦那様の表情がわずかに揺れる。

「その上で、お願いがあります。この子を、できる限り幸せにしたいのです」
「幸せに……」
「はい。私が欲しかったものを、この子には与えてあげたい。疑われず、蔑まれず、誰かの都合で居場所を奪われることのないように」

やがて、この子はお上に仕える。
そして、目の前のこの人と同じように、軍神となり、鬼神と呼ばれるのかもしれない。
そうであったとしても、母親である私が、この子の幸せを諦めていい理由にはならない。

「少なくとも、この子がお上に仕えるその日まで。私がそうしても、構いませんか」
「構わないはずがない。……それは、お前だけに背負わせることではない。俺にも背負わせてくれ」