毒婦の嫁入り~妹に騙された姉は、呪われた軍神の契約花嫁として求められる~

呟くように零れた声には、私への気遣いというよりも、抑えきれない焦燥が滲んでいた。
その表情から目を逸らせない。

「一条家の噂は聞いたことがあるな?」
「……うっすらとですが」
「ずっと昔だ。お上に救われ、末代までの忠義を誓った。俺の胸に刻まれた誓痕がその証」
「誓痕は脳を灼くというのは……?」
「……二十五になるまでに次の軍神となるべく子を成さねば、誓痕は胸から首を伝い、やがて脳を灼く……」

脳を灼く誓痕が私を通し、子にも移った……
ただ家を出たい。その願いのせいで、自分ではなく、これから生まれるであろう子供に生まれながらの運命を背負わせてしまった。

私は……なんて取り返しのつかないことを……

「……私も、子を利用しようとしました」

そっと、下腹部に手を添える。
気のせいだとはわかっているけれど、心なしか熱を帯びているような気がする。

「子を成せば、あの家に戻されずに済むと思ったのです。旦那様の妻として認められるのではなく、契約を成せたなら、ここにいて構わないと言われ……それにみっともなく縋ってしまったのです」

なんて、浅はかな考えだったのだろう。
今日、初めて……いや、ひょっとしたら、お互い正面から向き合うのは、婚儀のあとのあの夜以降、これが初めてかもしれない。