「やめて! お姉様は毒婦なんかじゃありませんわ!」
婚約者である隆弘様からの視線が、最近厳しくなっていたことには気が付いていた。
それでも予定している祝言は一年後。
少しでも機嫌を損ねないように振る舞うことに、疲れていないかと言ったら嘘になるけれど。
何をするにも妹である花乃を優先する家を出られるなら……その一心だった。
「……やはりそうなんだな」
「隆弘様! お姉様を責めないで!!」
突然私と隆弘様の間に割って入ってきた、花乃の言葉に宴は水を打ったようにしんと静まり返る。
「あの……隆弘様……」
「否定しないのか。安土の毒婦の異名を」
異名……? 初めて聞いた言葉に、頭が真っ白になるばかり。
何か言わなければ。そう思うのに、喉はからからで言葉が出ない。
手に持っているグラスで喉を潤せばいいだけなのに、指先を動かすことすらできない。
「だって、お姉様はこんなにもお美しいんですもの! どの殿方も放っておくわけがありませんわ!」
「花乃……?」
やっと絞り出すように名を呼んだ、私の手を握る花乃の唇が弧を描く。
「わたくしは、毒婦と言われても、お姉様を信じていますわ」
やられた……と、気が付いた時にはもう遅かった。
私の名はその時には既に、「安土一の毒婦」と周知されていたのだ。
婚約者である隆弘様からの視線が、最近厳しくなっていたことには気が付いていた。
それでも予定している祝言は一年後。
少しでも機嫌を損ねないように振る舞うことに、疲れていないかと言ったら嘘になるけれど。
何をするにも妹である花乃を優先する家を出られるなら……その一心だった。
「……やはりそうなんだな」
「隆弘様! お姉様を責めないで!!」
突然私と隆弘様の間に割って入ってきた、花乃の言葉に宴は水を打ったようにしんと静まり返る。
「あの……隆弘様……」
「否定しないのか。安土の毒婦の異名を」
異名……? 初めて聞いた言葉に、頭が真っ白になるばかり。
何か言わなければ。そう思うのに、喉はからからで言葉が出ない。
手に持っているグラスで喉を潤せばいいだけなのに、指先を動かすことすらできない。
「だって、お姉様はこんなにもお美しいんですもの! どの殿方も放っておくわけがありませんわ!」
「花乃……?」
やっと絞り出すように名を呼んだ、私の手を握る花乃の唇が弧を描く。
「わたくしは、毒婦と言われても、お姉様を信じていますわ」
やられた……と、気が付いた時にはもう遅かった。
私の名はその時には既に、「安土一の毒婦」と周知されていたのだ。



