ラピスラズリに幸福を

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 あれから一週間が経過した。夫とはいつも通りの夫婦生活を送っている。でもどこかでぴりりとした緊張感が漂っていた。
 今回のタイミング法でダメだったら、次は……。
 お互い口には出さないけれど、“次”のことを考えると、プレッシャーを感じてしまうのだ。自然とお互いの視線は交わらなくなる。寂しかった。寂しさを紛らわせるように毎日仕事に出かけた。

「新企画、何か思いつく人はいる?」

 マーケティング部第1課の四人で、広い会議室の端っこに固まって座っていた。
 今日は、次にヒットを狙うおもちゃ商品の企画を考える会議だ。
マーケティング部は1課と2課があり、後々2課の人たちと企画を持ち寄って、一番良い案を検討するという流れで行われる。
 そのために、まずは1課の中でいくつか企画案を出す必要があった。
 課長がみんなの顔をぐるりと見回す。その目がいつも通り鋭くて、意見を言わないやつは即退散! とでも言っているかのようだ。
 本来、少人数での会議なら普段仕事をしているデスクで行うのでも十分なはずだが、課長はいつも会議室へと私たちを誘う。目の前にパソコンがあると、どうしても集中力が削がれてしまうから、互いの顔しか見えない会議室で集中して話し合いをしたいのだそうだ。
 会議室にやってきた途端、私なんかは自然と背筋が伸びてしまうのだけれど、翡翠は「またここですかあ」と気怠げな態度でため息を吐いた。
 翡翠を見つめる課長の目が釣り上がる。
麻耶さんが二人の間の空気をなだめるように、「とりあえず意見交換をしましょう」と提案した。私も大きく頷く。

「あたし、考えてきたんですけど。前回の市場調査で最近輸入もののおもちゃを買う人が増えているそうです。おもちゃだけじゃなくて、ベビーカーとかもそうなんですけど。国内のメーカーがベビーカーの販売を中止するぐらい、海外製のものが売れてるんですよ。で、理由は“おしゃれだから”が圧倒的に多かったんです」

「それってベビーカーの話?」
 
 課長がつっこむ。麻耶さんが「いえ」と首を横に振った。

「ベビーカーも、おもちゃも両方です。あとは子ども用の椅子とかも、ですね。おしゃれで洗練されたデザインのものを選びたい親が増えているみたいです」

 課長がホワイトボードに「おしゃれ」「洗練」というワードを書く。翡翠はじっと目を細めてホワイトボートを見つめている。

「おもちゃも、300円ショップとかでも淡い色合いのものが増えた気がします。おもちゃはもはやインテリアでもありますから、家の中の景観を損なわない色味をしたものが人気なのかもしれないです」

ホワイトボードに「インテリア」が加わる。
 なるほど……私は子どもがいないから分からないけれど、確かにこのSNS時代、おしゃれさはかなり重要になってくるのだろう。
 
「だから、うちもデザイン性についてもう少し考えるべきだと思うんですよ。どっちかっていうと、昔ながらの派手な色をしたデザインのものが多いですよね。もっと親目線になって“欲しい”と思えるようなデザインのものが必要だと思います。物価が上昇する中で収入も増えない。そんな中でも買いたいと思えるおもちゃを——」

 麻耶さんが発言を続ける中、私は「本当にそうだろうか」と疑問が湧いていることに気づいた。
 確かに、おしゃれさは大事だ。おもちゃを買うのにお金を払うのは親だし、購入の意思決定をするのも親。だから、新しいメーカーたちは大人に響くようなデザインのおもちゃをこぞってつくっているように感じる。だけど、昔ながらのおもちゃをつくり続けるうちのこだわりだって、大事だと思うのだ。
 もやもやした気持ちを抱えながら話を聞いていると、唐突に翡翠が「あの」と声を上げた。