1.幼なじみと歩む新しい学び舎への道
「よう、ハル」
生徒用の玄関の前で新入生のクラス分けの掲示を見ていたら、背後から声をかけてきたのは、中学の同級生、一条怜だ。というか、彼は小学生のときからずっとアタシと一緒の学校なのだ。
『二人はつきあってるの?』とよく聞かれ、冷やかされ続けてきたから正直よくわからない。一緒にいる時間が長いのと、なんかもう自然で二人の関係がなんなのか、正しく答えられない。
でもね、アタシは知っている。周りの生徒たちは、彼はただの『ダンスが得意な秀才君』だと思っていたけど、そうじゃない。
銀縁のメガネをはずすと、なかなかクールなイケメン……でも、ちょっと弱気なところもあって、そのギャップには、未だにキュンとくる……あれ、やっぱアタシ、彼のこと、好きなのかな?
「お互い入学おめでとう……だけど、クラスは違うみたいね。怜はC組、アタシはB組」
「そうだな、でもまあ、教室は隣同士みたいだし」
「隣同士だから?」
「い、いやその……いつでも話せるだろ」
そう。怜もアタシも『クラスが違って残念だったね、もっともっと一緒にいたかったのに』と言い出せないから、この腐れ縁関係が足かけ十年続いてしまってるんだ。
「新入生のみなさん、一旦自分の教室に入ってください。その後、すぐに入学式ですので、案内係の指示に従って体育館に入ってもらいます。下駄箱にはクラスと生徒番号が表示されているので靴はそこで履き替えてください」
誘導係の腕章をつけた男子生徒がメガホンでがなりたてる。
じゃあまたあとで、と怜に手を振る。
アタシは、この新しい世界で、『二つの高校デビュー』を夢見ている。
一つは、もちろん、『恋のデビュー』。
その相手は多分、いやほぼ確実に、一条怜。幼なじみからの両片思い……そのスッキリとしない関係をハッキリとした関係に変えるんだ。
そしてもう一つは、『ステージデビュー』。
小さい頃からちょっと厳しめの音楽教室でピアノと歌と作曲を習っていて、コンクールに出ては予選落ちというのをずっと繰り返してきた。そりゃそうだ。だってアタシ、親に言われるがままに習い事をしていたので、ピアノを弾いてどうなりたいのかなんて全然考えてなかったんだもの。
でも、今は目標があるんだ。それは、去年、この学校の文化祭に見学に来て、体育館のライブを観たときに生まれた。
気品を感じる美しい女子生徒がエレキギターをかき鳴らし、心の叫びを響かせる。その横では、音楽に合わせてキレよく踊る男子生徒。
あんな風になりたい! 思いをすべて歌にして、みんなに届けるんだ……あ、アタシもそこそこ歌も上手いよ。
そして、キーボードを弾き語りするアタシの隣で、怜が素敵なダンスを披露してくれるだろう。
まさに、恋と音楽の一石二鳥。
そのためにアタシは怜を誘って、軽音部に入る……そして、あの憧れの先輩たちにいっぱい教えてもらうんだ。
心臓のドキドキは、アタシを放っておいてくれない。だから右手で軽く胸を押さえ、『私立愛求学園』の学び舎に進んだ。
2.これでも入学式⁉
「では、ただ今より入学式を開始します」
ステージ脇のスタンドマイクで司会の生徒が一声を発した。
新入生と保護者は、大きな体育館のフロア部分に並べられたパイプ椅子に着席しており、二、三年生は、体育館両側の観客席に座っている。
「まずはじめに、校長先生より、お祝いのお言葉をいただきます」
「ハイ!」
ステージ下には、新入生に向き合う形で先生方、来賓の方々が座っておられ、その中から一人の女性が元気よく返事をし、スクッと立ち上がった。
ステップを上がってステージに向かう女性は……アタシたちと同じ制服姿だ!?
「さっき、司会の人、校長先生のあいさつって言ったよね?」
「ひょっとして生徒会長の間違い?……まさか新入生代表?」
フロアがざわつく。
観客席の二、三年生の席からは『あちゃー、やっぱやったか』とか『こないだの卒業式もそうだったよな』とかの声も聞こえる。
主賓席では、鬼瓦のような顔をした大柄なおじさんが頭に手を当ててうつむいていた。
その女子生徒は演壇に立つと、姿勢を正し、まるでキャビンアテンダントかホテルのスタッフさんみたいに優雅にお辞儀をし、顔を上げるとニッコリと微笑んだ。
「新入生のみなさま、愛求学園にようこそ。そしてご入学おめでとうございます」
品格を感じる声でお祝いの言葉が発せられた。この人、やっぱり生徒会長かな?
その女子生徒は、両手を肩の高さまであげ、自分の体を見回して言った。
「今年度からウチの学校の制服を変えてみたの。これ、なかなかいいでしょ? 私、似合ってるよね、ね! ね?」
フロアのザワザワが大きくなる。
「あ、ごめん、自己紹介するの忘れてた。私、この学校の校長をやってる、桜羽 遥(さくらば はるか)って言います!」
一瞬の沈黙のあと、新入生が座る一階席から、さらに大きなざわめきが起き、二、三年生の席からは『遥先生、似合ってるよー!』とヤジが飛ぶ。
校長先生?は、片手を上げ、ざわめきを鎮める。
「よくさー、長くてつまんない話の例えで、『校長先生のあいさつ』って揶揄(やゆ)されるじゃない? 私、そんな風に言われるの、ヤだから、ちょびっとしか喋んないわよ。だからみんな、聞き逃さないようにしてね♡」
そう言って先生は演壇の前に出てステージのヘリに立った。
「あ、その前に……この学校の名前はなんだったっけ?」
JK制服姿の校長先生が首を傾け、回答を促す。
「あ、愛求学園ですけど」
沈黙に耐えられなかったのか、新入生の男子が答える。
「グッド! ていうか誰でもわかるか……じゃあさ、この学校の『建学の精神』て知ってる?」
先生は片手を上げて、フロアを見渡す。
「あ、愛の探求……ですか?」
今度は女子生徒が答えた。
「おーっ、よくわかったね! っていうか、学園の名前そのものよね……この言葉には、生徒たちがお互いに愛を抱き、尊重しあい、学園生活とその後の人生を幸せに送れるように学ぼうね、という願いが込められているのよ」
『遥ちゃん先生、めずらしくマトモなこと言っている!』と二階の観客席からヤジが飛び、笑いが起きる。
「それでですね……いきなりまとめます!」
そう言って先生は片手をまっすぐ上げて、天井を指した。
「あなたたち新入生に贈るお祝いの言葉は……」
場内が静まる。
「その言葉は……『超・愛』スーパー・ラブ! です。 みんな、おめでとう」
そして校長先生はまた姿勢を正し、キャビンアテンダントみたいに優雅にお辞儀した。
アタシたち新入生たちは拍手をするのも忘れ、足早にステージを下りる制服姿の先生を呆然と眺めていた。
アタシは思った……いやきっとみんな同じ風に思っているに違いない。
この学校は、県下では有数の進学校だということで、がんばって受験勉強してココに入ったけど、大丈夫だろうか?……と。
校長先生がユニークだって、噂ではちょっと聞いたことがあったけど、JKの制服を着て入学式で『スーパー・ラブ!』って叫ぶなんて。
在校生から少しヤジが飛んでたけど(……それもどうかと思うけど)、みんなそんなに驚いてなかったし、前に並んでおられる先生や招待の方々は、わりと落ち着いていて……というかこれ、諦めの表情ね。
「……校長先生、ありがとうございました。続きまして、生徒会長と副会長からあいさつがあります。桜羽会長、倭(やまと)副会長、お願いします」
え、桜羽さん? 校長先生と同じ苗字?
男女の生徒が演壇に立ち、さっと礼をした。
「新入生の皆さま、本日はご入学おめでとうございます。生徒会長の桜羽夏鈴(かりん)と申します。えーと、すぐわかってしまうことなのでネタバレしますね。名前から察せられる通り、私は校長先生の親族、従妹です。あ、でも特別に贔屓なんてしてもらってませんよ……ちょっと暑っ苦しく『溺愛』されてますけど」
会場からクスクスと笑いが起きた。小柄で可愛い会長さんもニッコリと笑った。
「会長、いいツカミかたやわ」
会長さんの隣りの男子生徒が合いの手を入れた。
「あ、忘れてました。私の隣にいるのは、副会長の倭 丈瑠(やまと たける)です」
「えー、ただいまご紹介いただきました、ジブン、ヤマトタケル言います。みなさん、ご入学……」
「では、話を先に進めます。」
会長さんが割って入り、そんなもうちょっと喋らせてえなーと副会長さんがブツブツ言っている。夫婦漫才か?
「さきほど校長先生のごあいさつで、いきなり『(声真似で)超・愛、スーパー・ラブよ!』なんてキーワードが出てきましたけど、少しかみ砕いて説明しておきます」
会長さんはコホンと咳払いして続ける。
「わが校では、三年前、さきほどみなさんが答えてくれた建学精神に則(のっと)り 、ただの精神論だけでなく教育プログラムや評価制度の改革を行いました。当時の生徒会長と校長先生がタッグを組んで作り上げた、『愛の結晶』です」
そう言って、会長さんはなにか意味ありげにニヤリと笑って二、三年生の座席を見渡した。
「愛とはなにか? それを『ルダス、プラグマ、ストルゲ、アガペー、エロス、マニア』の六つに分解して、自分の周囲との人間関係において、どのような愛を持って接するべきかを考え、実践していこうというものです。これはカナダの社会心理学者が提唱した、恋愛心理学の理論が大元になっています」
「このとりくみを始めてから、生徒同士の人間関係もよくなって、ご家族や近隣の方々からも評判ええんですわ」
タケルが補足し、ドヤ顔を見せる。
それを無視して可愛い会長さんが話を進める。
「この成果を踏まえ、さらに次を目指そうか、と生徒会のメンバーや校長先生と話している最中なんです」
「えーっと、それ具体的にどないなことやろか?」
「いやそれ、アンタも、じゃなかったヤマト君とも話したと思うけど。特にあなたにも十分関係があることなのに」
「そやったやろか? まあそんな冷たいこと言わんといて、ヒントだけでも……」
会場から笑いが起きる。
「どっちみち、新入生のみなさんに話そうと思ってたことだからいいですけど」
会長さんは、アタシたちに向き直り、口を開ける。
「今、ジェンダーレスやLGBTQなど、従来の固定観念に縛られない人間関係のあり方や社会制度の見直しなどが進んでいます。しかし、学校という社会は、このような動きから一歩も二歩も遅れているのが現実と言わざるを得ません。そこでわが校が先駆けてこのような古い習慣や考え方を崩し、超えていこうと考えているわけです」
「なるほど、それで『スーパー・ラブ』ちゅうわけやね!」
「……その安っぽい通販番組みたいな合いの手の入れ方、やめてくれない?」
再び新入生の間から笑いが起きる、このお二人、息があってるんだかあってないんだかよくわからないけど、これはこれで面白いな。
気を取り直して、副会長さんが質問する。
「で、『スーパー・ラブ』っちゅうのは、具体的にどないなことすんの?」
「……そうね、それを生徒会役員が中心となって、みんなで考えて行かなくちゃいけないんだけど……実をいうとね、この学校の生徒会役員の任期は五月までで、六月から新役員で運営されるの。だから、『スーパー・ラブ』に関しては新メンバーに引き継いで考えてもらうことになるわ」
「そうすると、これからすぐに生徒会役員の選挙があるっていうことでんな?」
「そう。で、生徒会は一、二年生が中心メンバーになるから、新入生のみなさんにもぜひ参加して欲しいの」
「ははー、さては桜羽会長はん、生徒会からの入学祝いのあいさつの時間を利用して、生徒会役員の勧誘をしようっていう魂胆やったんやな?」
「まあ、そういうこと」
小柄な生徒会長は、体育館の座席全体をぐるりと見回す。
「新入生のみなさん、二年生のみなさん、生徒会に積極的に参加して、より楽しい学園生活を送りましょうね! あ、私と、このヤマト君は六月からも残って『生徒会アドバイザー』としてサポートするから安心してね」
「え!? ジブンも残るん?」
副会長が驚きながら自分を指さす。
「あったりまえじゃない! どうも失礼しましたー!」
会長は副会長の頭を無理やり押さえ、二人で一礼して、ステージを下りた……と思ったらまた上がって来た!?
生徒会長がちょこんと頭を下げる
「あの、忘れてました……せっかくなんで、みなさんへお祝いの歌、出発を応援する歌を贈ります!」
3.お祝いの歌に魅せられて
フロアと二階席の照明が落ちたと思ったら、スピーカーから音楽が流れてきた……なんかレトロっぽいんだけど、まさかこれ、校歌、じゃないよね?
ステージ脇のスタッフから会長と副会長にハンドマイクが手渡された。
スポットライトが二人を浮かび上がらせ、ステージ後ろの白い壁は、色鮮やかな間接照明で照らされた。
アーティスト:桜羽夏鈴 倭丈瑠
「ディスカバー・マイ・セルフ」
作詞・作曲:桜羽夏鈴
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♪♪♪~ (九十年代風レトロ歌謡ポップス調)
【Aメロ】
(夏鈴)
昇降口の 白い掲示板
並んだ名前に自分を探す
そうか もう はじまってるんだ
発見の 冒険
知ってる仲間は 別の教室
未知の場所 知らない顔に 囲まれて
鳴り響くチャイムが 胸を急かす
だけど怯まないで そのドキドキは
新しいキミを 見つけるための
始まりの エネルギー
【Bメロ】
(夏鈴)
エラそうに 壇上に立つ私だって
去年の春は 不安でポロポロ
でもね 受験の夜を 試験の朝を
学校生活を
いつだって隣で 支えてくれる人がいたんだ
(丈瑠)
……それ、ジブンのことやろ?♡
(夏鈴)
……あんたじゃないわよ、自意識過剰!
(夏鈴・丈瑠)
大丈夫、この学校は、一人にさせない!
【サビ】
(夏鈴)
さあ 一歩を踏み出して
冒険! 発見! まだ見ぬ自分
ちょっとの勇気と たくさんの仲間を
ぎゅっと カバンに詰め込んで
見つけにいこう あしたの窓を開けて
キミが愛し キミを愛してくれる
世界にたった一人の 大切な人
……実はアタシも、その恋を
まだ 見つけてる真っ最中なんだけどね
(丈瑠)
ええっ⁉ ジブンら、もう恋人同士ちゃうんかいな!
(夏鈴)
無理無理、お断り!
──さあ、奇跡だらけのステージへ飛び込もう!
~♪♪♪
二人はマイクを降ろすと、一礼した。
パラパラとまばらな拍手の中、今度こそ本当にステージを下りた。
アタシたち新入生は、不安気にお互い顔を見合わせる。
……ちょっとびっくりしたけど、生徒会長さん(副会長さんはオマケかな)の心を込めた応援メッセージは、不安混じりのアタシの気持ちをやわらげ、勇気づけてくれたと思う。
そんな中、
「キャー! カリンちゃん、ステキー!」
と声をあげ、推しうちわをバタバタと振っている女子生徒は……よく見ると、あの校長先生だった。
次は私歌うー! とステージに上がろうとしていたが、スタッフの生徒たちに取り押さえられていた……
と思ったら、生徒会長さんがまたステージの上に上がってきて、マイクを顔の前に上げた。
「えー、新入生の皆さま、お聞き苦しいの、聞かせちゃってごめんなさいね……これも校長先生からのコマンドで、『生徒会長みずから、思いを歌にして届けなきゃだめよ』って言われて……」
そのコメントに今度は大きな拍手が鳴り響き、会長さんはにっこりと微笑んだ。
気がつくと、照明を落としたステージ上には、男女の生徒が立っていた。
女子生徒はエレキギターを持ち、男子生徒は手ぶらだ。
二人とも、体にフィットした黒いトップスに、ワイドシルエットのカーゴパンツ姿。スタイルがいいのか、無茶苦茶サマになっている。
ステージの照明が灯った。
二、三年の席からは、「キャー!」「待ってましたー」との歓声が上がる。
この二人は!
「新入生、在校生の皆さま、やっぱこの二人に出てきてもらわないと、入学式、終われないよね!」
「「「イェース!」」」
生徒会長さんがさっきと違うテンションでコールし、大きなレスポンスが返ってきた。
……そう、これ、確か入学式だよね。
会長さんは続ける。
「この春、合併して誕生した『生徒会&軽音部&ダンス部、正式名称は、『Supreme Empire of Xenial Youth――仲いい若者たちの超イケてる帝国――S.E.X.Y.』
な、なにそれ⁉ 生徒会と軽音部とダンス部の合併? その名前が『セクシー』? わけわかんない!
会長さん、アタシの疑問の声が聞こえたわけじゃないと思うけど、こう言った。
「そう! そのセクシーのトップアーティストにてベストカップルの二人、サエ&ヒナタから、歌とダンスで熱いメッセージをプレゼントします……二人とも二年生なので、もちろん次の生徒会役員の選挙に仲良く立候補すると言ってくれています」
そうだ、この二人、去年観に行った文化祭のステージでアタシのハートを打ち抜いたユニットだ!
サエさんと呼ばれた女子生徒は、黒髪のセミロングに銀縁のメガネ。それがクールで知的な雰囲気をグッと強めている。一方のヒナタさんは、サエさんよりも頭二つ分背が高く、ウエーブがかったライトブラウンの髪色。対照的な外見の二人だけど、そのギャップが、かえって『お似合いのカップル』だと思わせる。
二、三年の座席もそうだけど、新入生の席からも大きな歓声が上がった。
いつの間にか、ドラムとベースのバック奏者もスタンバっている。
サエと呼ばれた女子生徒がギターを肩にかけたまま、右手を上げ叫んだ。
「ハロー、アリーナ!」
「「「イェーイ!」」」
生徒たちのボルテージも上がりまくり。
歪んだカッティングギターから始まり、一気に重低音の効いたフューチャー・ベースでキレのあるダンスビートへなだれ込む。
ヒナタさんは、それに合わせて全身でリズムをとっていたが、激しい動きのダンスに変わった。背が高いせいか、その身のこなしに余裕を感じる。
歌が始まった。
アーティスト:月城冴 瀬戸陽向
「描け! 愛のカタチ」
作詞・振付:瀬戸陽向 作曲:月城冴
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♪♪♪~ (アニソン風J-POP・デジタルポップロック)
【Aメロ】
(冴)
桜の門をくぐり抜けたら
キミは一歩 おとなに変身したよ
はじまったばかりの プロローグ
(陽向)
少し大きめの制服だけど それが伸びしろ
愛を探すステージへようこそ
出会えた奇跡に おめでとうを 心から
(冴・陽向)
さあ 始まりの幕が今上がる!
【Bメロ】
(冴)
生徒手帳に書かれた文字だけじゃ
この胸のリズムは 高まらない
(陽向)
ココロを跳ねさせる 本当の恋って?
スーパーラブの カタチって?
(冴・陽向)
自由な心とフリーハンドで
ボクらの未来を 確かめにゆこう
【サビ】
(冴・陽向)
はみ出しちゃえ 方程式のウラガワへ!
そこにあるはず キミだけの愛
(冴)
ギターを奏でる 私たちは
ほんの 一対のサンプル
(陽向)
いっばい恋して 傷ついて
涙の粒だけ ピカピカ光る
(冴・陽向)
キレイに収まる 模範解答、ノーサンキュー
全校生徒分の多角形
さあ 描こう! 僕らの 私たちだけの 愛のカタチを
~♪♪♪
ヒナタさんの激しいソロダンスと、サエさんの耳を突き刺すようなギターソロが完全にシンクロし、最後は二人が背中合わせにピタリと止まった。
体育館が揺れるほどの拍手と大歓声のなか、舞台は暗転した……
後部の保護者席は、完全にこの流れに取り残されたみたい。
「これをもちまして、入学式を終了します。新入生のみなさんは、このあと各教室で担任の先生の紹介と説明事項がありますので、来賓の皆さまが退場されたあと、指示に従って順番に移動してください」
ナゾの入学式が終わった……
生徒会と軽音部とダンス部の合併? なにそれ? アタシが『高校ステージデビュー』を果たすためには、あの……『S.E.X.Y.』に入んなくちゃだめってこと? そうすると、生徒会に立候補しなくちゃいけないってこと?
わからないことだらけだ。
アタシは急に不安になって、新入生の集団から怜の姿を探した。
彼はアタシの姿をすでに見つけていて、こっちを見つめている。
「?」
アタシが首を傾けて「わけわかんない」とテレパシーで伝えると……
「?……」
彼は一回だけ首を振り、「同じく」という答えがテレパシーを返してきた。
ひとつだけ、よくわかったことがある。
アタシは、あの二人、サエ&ヒナタさんの歌とダンスの虜になってしまった、ということ。
でも、その気持ちは、二人の音楽に対してなのか、二人の『人間そのもの』に対してなのか、よくわからない。
きっと、この愛求学園でそれを探し求めていくんだと思う。



