「私の癒しの手は、いずれ使えなくなります。そしたら、何の価値もない私は、志遠様のお荷物になると思いました。お役に立たなければと」
「流々。私は貴方に、私の役に立つ人間になってほしいと頼んだことがあったか?」
「いいえ」
「だったら?」
「……ですが、私は」
痩せ細った自分の身体を目にする度、虚しくなる。
(正妃様の言う通り)
こんな私を誰が気に入るというのだろう……。
しかし、志遠は目を丸くするばかりだった。
「一体、何が問題なんだ? 私は貴方がいいと言っている」
「分かって……います」
「分かっていないようだな? 私はむしろ、自分のような性悪に目をつけられて、貴方が可哀想だと思っているのだが?」
「そんなことは……」
ない……と、否定しようとして、そうでもないことに、私は気が付いた。
雨露がすぐ隣にいるにも関わらず、志遠は私をぐっと抱き寄せてくる。
わざと見せつけているのだ。
「……まったく」
目のやり場に困った雨露が、くるりと背を向けた。
「これだけ、ベタつかれながら、自虐に走る人もどうかと……」
「雨露」
「はいはい、邪魔者は去りますよ。いい加減、流々様のその、役に立たない思い込みを解いてさしあげてくださいね」
捨て台詞をきっちり吐いて、雨露は房間を出て行ってしまった。
「あいつ、反省してないな」
志遠は呆れていたが、声は穏やかだった。
「信頼されているんですね?」
「ああ。あいつは煩いが、本当のことしか言わない」
「……ええ」
「だから、そういうことだ。流々。貴方の思い込みは役に立たない」
「……」
志遠が私の顎に手を置き、しっかり目を合わせてきた。
「確かに、長年言われ続けたことを、急に取っ払うのは難しいかもしれない。でも、私は思うんだ。流々の父上が先視の能力者だとしたら、貴方だけでも生かすために、私のもとに嫁がせたんじゃないかって」
「父様が?」
「……憶測だけどな」
目を細め、屈託なく笑う。
……お前のために我らの力を貸そう。
(あの夜、志遠様たちを後宮に逃したのは……)
「志遠様、私……」
「流々。いいか? 貴方は役立たずなんかじゃない。必要な人間なんだ。私にも、この国にも。貴方は国を救った天后の子孫として、国民からも人気があるんだぞ」
「どうして、そんな?」
志遠は「さあ」と答えたが、心当たりがあるようだ。
「そのうち、私の方が嫉妬してしまいそうだな。皆に持て囃される貴方を見て、私は愛されてないんじゃないかって」
「私は、どうしたら?」
「簡単だろ」
そう囁くや否や、志遠は私が察する前に、不意打ちで唇を重ねてきたのだった。
「流々。私は貴方に、私の役に立つ人間になってほしいと頼んだことがあったか?」
「いいえ」
「だったら?」
「……ですが、私は」
痩せ細った自分の身体を目にする度、虚しくなる。
(正妃様の言う通り)
こんな私を誰が気に入るというのだろう……。
しかし、志遠は目を丸くするばかりだった。
「一体、何が問題なんだ? 私は貴方がいいと言っている」
「分かって……います」
「分かっていないようだな? 私はむしろ、自分のような性悪に目をつけられて、貴方が可哀想だと思っているのだが?」
「そんなことは……」
ない……と、否定しようとして、そうでもないことに、私は気が付いた。
雨露がすぐ隣にいるにも関わらず、志遠は私をぐっと抱き寄せてくる。
わざと見せつけているのだ。
「……まったく」
目のやり場に困った雨露が、くるりと背を向けた。
「これだけ、ベタつかれながら、自虐に走る人もどうかと……」
「雨露」
「はいはい、邪魔者は去りますよ。いい加減、流々様のその、役に立たない思い込みを解いてさしあげてくださいね」
捨て台詞をきっちり吐いて、雨露は房間を出て行ってしまった。
「あいつ、反省してないな」
志遠は呆れていたが、声は穏やかだった。
「信頼されているんですね?」
「ああ。あいつは煩いが、本当のことしか言わない」
「……ええ」
「だから、そういうことだ。流々。貴方の思い込みは役に立たない」
「……」
志遠が私の顎に手を置き、しっかり目を合わせてきた。
「確かに、長年言われ続けたことを、急に取っ払うのは難しいかもしれない。でも、私は思うんだ。流々の父上が先視の能力者だとしたら、貴方だけでも生かすために、私のもとに嫁がせたんじゃないかって」
「父様が?」
「……憶測だけどな」
目を細め、屈託なく笑う。
……お前のために我らの力を貸そう。
(あの夜、志遠様たちを後宮に逃したのは……)
「志遠様、私……」
「流々。いいか? 貴方は役立たずなんかじゃない。必要な人間なんだ。私にも、この国にも。貴方は国を救った天后の子孫として、国民からも人気があるんだぞ」
「どうして、そんな?」
志遠は「さあ」と答えたが、心当たりがあるようだ。
「そのうち、私の方が嫉妬してしまいそうだな。皆に持て囃される貴方を見て、私は愛されてないんじゃないかって」
「私は、どうしたら?」
「簡単だろ」
そう囁くや否や、志遠は私が察する前に、不意打ちで唇を重ねてきたのだった。



